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次世代型BWRの格納容器を自然の力で守る




図3-4 PCCSの概念図

PCCSは自然の力によって蒸気を熱交換器内に導き、放射性物質を閉じこめたまま熱だけを環境に放出し、格納容器を守ります。



図3-5 伝熱管内部の環状凝縮流領域の可視化に成功

高速度ビデオ(9000flame/s)により圧力0.7MPa、蒸気流速17m/s の条件下で巻波(roll wave)が凝縮液膜上を伝播する様子を初めて見出しました。



図3-6 熱伝達係数と巻波の通過

巻波の通過頻度の増加に従い、熱伝達係数が単調に増加する傾向を見出しました。



図3-7 環状流凝縮熱伝達モデルによる予測値と実験値との比較

これまでとは異なる考え方に基づいたモデルですが、良好に実験値を予測します。




 次世代型BWRでは、万一炉心が溶けるようなシビアアクシデントが生じても、ポンプなどの動力を使わず、自然の力によって格納容器を守る全く新しい冷却システム「静的格納容器冷却系(PCCS: Passive Containment Cooling System)」の設置が検討されています。PCCSは図3-4 に示すように、放射性物質を格納容器内に閉じこめたまま、蒸気の凝縮と水の沸騰を利用し、格納容器内の熱だけを環境に放出する安全機器です。
 私たちは、耐震性、経済性、保守性に優れた横型の熱交換器を用いたPCCSを研究開発してきました。熱交換器伝熱管において最も伝熱量が大きな環状流領域の伝熱メカニズムについて詳しく調べたところ、図3-5 に示すような巻波が環状凝縮流の液膜上を伝播しており、その通過頻度によって熱伝達係数が整理できることを見出しました(図3-6)。そこで、巻波の通過頻度という新概念に基づく環状流凝縮熱伝達モデルを提案し、除熱性能を精度良く予測可能にしました(図3-7)。
 現在は、実物大の熱交換器試験体を大型非定常実験装置(ROSA/LSTF)に設置して試験を行い、沸騰による水プール内の2次側流れに関わらず、伝熱管間にほぼ一様に安定に蒸気が流れることなどを明らかにし、実用化に向けた最終評価を行っています。



参考文献
M. Kondo et al., Roll Wave Effects on Annular Condensing Heat Transfer in Horizontal PCCS Condenser Tube, Proc. 10th Int. Conf. Nucl. Eng., Arlington (ICONE10), 22403 (2002).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2003
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