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中性子束の分布から核燃料の未臨界の度合いを測る
―高次モード解析による測定技術の高精度化―




図3-8 TCAでの指数実験の体系図

TCAで低濃縮UO2燃料棒を11本×11本で配列させ、軽水水位130cmで指数実験法を行いました。燃料棒下端にはCf-252中性子源を配置し、中性子検出器を垂直方向に駆動して中性子分布を測定しました。



図3-9 TCA での垂直方向の熱中性子束分布

燃料配列の中心に中性子源を、燃料配列の角に検出器を配置し、中性子束分布を測定した結果です。



図3-10 高次モード中性子束の一例

9次の高次モードの熱中性子束の水平方向の分布を示します。検出器位置では負になっており、図3-15において中性子束が基本モードよりも小さくなるのは、このモードのような負の高次モードの影響によるものです。



 原子力発電所で使用した使用済燃料をプールなどで貯蔵する場合には、臨界にならないようにする必要があります。核燃料が臨界からどれだけ離れているのか(未臨界度)を測定する方法として、図3-8 のように垂直方向の中性子束分布を測定して、指数関数の減衰定数を求める方法である指数実験法が使用済燃料貯蔵プールにおいて有効であることが分かっています。しかし、この場合も弦の振動などに見られるように、無数のモードが重ね合わさった分布しか測定されません。未臨界度を測定する観点からは、多数のモードの中で臨界に一番近いモード、いわゆる基本モードの分布を測定する必要があります。そこで軽水臨界実験装置TCAにおいて図3-8 のような未臨界の実験体系で中性子束分布を測定し、基本モード以外の高次のモードがどのように励起されるのかを測定する実験を行うとともに、指数実験法での中性子束分布を高次モードの重ね合わせに分解する計算手法の開発を行いました。
 図3-9 の測定結果では、中性子源に近いところでは負の高次モード(図3-10)の影響により中性子束分布が基本モードよりも小さくなっていますが、20cm以上離れれば基本モードが測定できることが分かります。この分布を高次モードの重ね合わせで再現したところ、中性子源付近では9次までではまだ不十分で、さらに180次までの高次モードを考慮した場合では再現性がよくなっています。
 以上のように、指数実験法の高次モード解析手法の開発により、同手法の高精度化を図ることができるようになり、燃料貯蔵プールなどの実施設での未臨界度測定への実用化に資するものと期待できます。



参考文献
T. Yamamoto et al., Effect of Higher-Harmonic Flux in Exponential Experiment for Subcriticality Measurement, J. Nucl. Sci. Technol., 40(2), 77 (2003).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2003
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