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体内放射能を正確に測る校正法を高度化




図3-13 実測および計算による体外計測装置の校正



図3-14 原研の全身カウンタ

東洋で最初の全身カウンタとして開発され、現在も利用されています。



図3-15 セシウム137に対する全身カウンタ校正結果例(実測と計算の比較)

セシウム137 を含んだ水ブロックファントムについて、計算結果が、実測結果と良く一致し、計算による校正手法の妥当性が検証されました。



図3-16 全身カウンタの校正定数例(日本人成人男女および水ブロックのデータ)

全身カウンタの校正定数は、光子のエネルギーや被検者の体格等に依存します。数学ファントムの利用により、適切な全身カウンタの校正定数が得られます。




 内部被ばくによる線量の評価では、個人が摂取した放射能を測定する必要があります。その測定には、一般に全身カウンタに代表される体外計測装置を利用します。体外計測装置において体内放射能を精度良く測定するには、被検者の体格などを模擬した物理ファントムにより校正する必要がありますが、多種多様な人体形状の模擬や偏在分布する可能性のある放射能を含有した物理ファントムをすべて整備することは極めて困難なことであり、現実的でありません。こうした状況を踏まえ、私たちは、図3-13 に示すように、これまでの実測に立脚した体外計測装置の校正手法に対して、モンテカルロ法を用いた計算による校正手法を開発しました。セシウム137を含有する水ブロックファントムに対する全身カウンタ(図3-14)の校正では、図3-15 に示すように、計算結果が実測結果と良く一致し、計算による全身カウンタの校正手法の妥当性が検証されました。さらに、図3-16 に示すように、医療画像データをもとに構築した数学ファントム(Otoko、Onago)を用いることにより、被検者個人の全身カウンタ校正定数を得ることが可能になりました。
 本研究により、多くの物理ファントムを整備することなく、放射線作業者や年齢分布を有する公衆の様々な被検者に対して信頼性の高い体内放射能測定が可能になりました。



参考文献
木名瀬 栄、計算シミュレーション手法に基づく体外計測法の高度化に関する研究、JAERI-Research 2003-011 (2003).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2003
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