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中性子のイメージを高精度で高速に視る




図4-3 背面読み取り法とコインシデンス法の組合せ

中性子検出シートの背面に検出波長帯の異なる2種類の波長シフトファイバ(ファイバの側面から蛍光を検出し長い波長の蛍光に変換し出力)を直交して配置することにより中性子の入射位置を求めます。実際には、中性子による蛍光は2本から3本の波長シフトファイバで検出されるため、コインシデンス法を用いて、同時に検出したファイバの中心の位置を入射位置と決定します。本方法を用いることにより計数率特性が一桁以上向上します。



図4-4 背面読み取り法の検出原理

発光スペクトルの短い波長帯を短波長用波長シフトファイバで検出し、透過した長い波長帯を長波長用波長シフトファイバで検出します。



図4-5 直径2mm 中性子ビームのイメージ測定結果




 大強度陽子加速器を用いた核破砕による高強度パルス中性子源の開発が進められています。このパルス中性子源の特長は、原子炉の定常中性子源と比較して平均中性子束は変わらないものの、ピーク中性子束が数100 倍強く、かつ飛行時間法を用いて中性子のエネルギー弁別を行うことができることです。
 パルス中性子源の特長を最大限に生かした中性子散乱実験や中性子ラジオグラフィなどを行うには、従来の検出器では困難であり、位置分解能、時間分解能、計数率特性などについて、これまでにない性能を持つ中性子イメージ検出器が必要となります。
 私たちは、「いかに位置精度良く、いかに速く、中性子イメージを視るか」を研究目標に、蛍光体/中性子コンバータ検出シートを用いたパルス中性子イメージング検出法の開発研究を進めました。
 「いかに速く」を実現するには、中性子検出シートに用いる蛍光体の短寿命化を図ることが不可欠です。このため、従来用いられてきたZnS:Agの代わりにY2SiO5:Ce3+という蛍光寿命が約40 nsの蛍光体を用いることにしました。蛍光寿命は短いのですが蛍光量は約20分の1と非常に少なくなることから、入射位置の検出には工夫が必要です。
 「いかに位置精度良く」を解決方法として、波長シフトファイバを用いて中性子検出シートの背面から蛍光をフォトン毎に検出し中性子の入射位置を検出する背面読み取り法と、検出したフォトンを用いて入射位置を精度良く決めるコインシデンス法を考案しました(図4-3、4-4)
 Y2SiO5:Ce3+蛍光体と7Li2 10B4O7中性子コンバータを混合し作製した中性子検出シートを用いた中性子イメージ検出器を試作して、JRR-3Mの中性子ビームを用いてイメージ検出実験を行いました。直径2mmのコリメートされた中性子ビームを測定した結果、図4-5に示すイメージが得られ、位置分解能は0.6mmであることが分かりました。また、計数率特性を測定した結果、1秒間に300万個の中性子が来ても中性子イメージを検出できることを確認しました。



参考文献
M. Katagiri et al., High Position-Resolution Scintillation Neutron Imaging Detector by Crossed-Fiber Readout with Novel Centroid Finding Method, Appl. Phys. A74, S1604 (2002).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2003
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