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電子線でセラミック繊維がチューブに変身
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シリコンカーバイト(SiC)繊維は、高強度、高耐熱性なセラミック連続繊維で、宇宙航空用や高温ガスタービンなどで使用されるセラミック複合材料の強化繊維として期待される新素材です。このSiC繊維の原料であるケイ素高分子は、軟化しにくく伸びにくいため、中空に繊維化することが困難でした。私たちは、ケイ素高分子が空気中で不均一に酸化される電子線照射効果を見いだし、これを応用することで、ケイ素高分子を繊維化後に中空化する技術を開発し、SiCマイクロチューブの合成に初めて成功しました。 この製法を図6-3に示します。ケイ素高分子繊維を空気中で電子線照射すると、分子の一部が切断してラジカルが生成し酸素と反応します。この際、繊維表面から内部へ拡散する酸素量に比べ、電子線によって作られるラジカルの生成量が十分多いと、酸素は繊維表面付近ですべて反応するため、繊維内部は酸化されません。このように不均一に酸化された繊維を250℃に加熱すると、酸化された表面部分のケイ素高分子のみが、酸素を介して橋かけされ、有機溶媒に不溶となります。一方、酸化されていない繊維内部は橋かけされないため、これを有機溶媒で抽出することにより、ケイ素高分子繊維の中空化が初めて可能になりました。この中空化したケイ素高分子繊維を、1300℃の不活性ガス中で焼成することにより、図6-4に示すようなアモルファス構造のSiCマイクロチューブへと転換することができます。このチューブの肉厚は、図6-5に示すように、電子線の単位時間あたりの照射量(線量率)により制御することが可能です。これは、線量率が大きくなると、それに伴ってラジカルの生成量が増大するため、表面から繊維内部へ拡散する酸素が表面により近い部分ですべて反応してしまうためです。 SiCマイクロチューブは高強度、高耐熱性に加えて、高耐蝕性を有しており、高温、腐蝕雰囲気中で使用されるセラミックフィルター、吸着材、触媒、マイクロリアクターなどへの応用が可能です。現在、SiCの強酸に耐える特長を活かして、原子力を利用した熱化学法による水素製造用の水素分離セラミックフィルターへの応用を目指しています。 |
●参考文献 M. Sugimoto et al., Development of Silicon Carbide Micro Tube from Precursor Polymer by Radiation Oxidation, Key Eng. Mater.,247, 133 (2003). |
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