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理論計算で探る液体ヘリウム中の化学反応
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ヘリウムはその強い量子性のために、低温にしても固体になりません。このような媒体中での化学反応を調べることによって、未知の化合物や新しい分子の合成法について知見が得られると期待されます。しかし、多くの原子を含む複雑な化学反応系に、量子力学を適用するのは難しい問題です。 私たちは溶質分子の運動には量子波束法を用い、溶媒の運動には経路積分セントロイド分子動力学法を用いるという、ハイブリッド理論を開発し、まずこれをヘリウムクラスター中に溶質分子が存在するという比較的簡単な系について研究しました。この計算法を用いると、量子的な粒子を含んだ化学反応のダイナミックスを実時間で簡単にシミュレートすることができます。 図7-12は、200個のヘリウムクラスターに塩素分子を入れ、非常に短いレーザーパルスで光分解させたときの、シミュレーション結果です。図7-13ではヘリウムの運動を量子力学的に取り扱った場合と、古典力学的に取り扱った場合の計算結果を比較しています。量子計算では、分解で生成したエネルギーがすばやくクラスター中に行き渡るヘリウムの量子性が見事に再現されています。この方法を用いると、量子媒体中の化学反応の理論的な理解が飛躍的に深まると期待できます。 |
●参考文献 T. Takayanagi et al., Photodissociation of Cl2 in Helium Clusters: an Application of Hybrid Method of Quantum Wavepacket Dynamics and Path Integral Centroid Molecular Dynamics, Chem. Phys. Lett., 372, 90 (2003). |
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2003 Copyright(c) 日本原子力研究所 |