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プルトニウムは土壌バリアで止められる
―天然の地層の持つ放射性核種の移行抑止効果を実地下環境で確認―




図9-4 地表から30mの地下水層に達する試験ピット

実地下環境で放射性核種の動きを調べるため、プルトニウム等で標識した土壌コアを試験ピット壁面から地下水層へ挿入します。



図9-5 試験開始から約3年経過後の地下水層における放射性核種の分布
 
3年間で、ストロンチウムは試験開始時の注入位置(0cm)から数mm下流へ動いたが、ネプツニウムとプルトニウムは土壌への吸着による移行抑止効果により、ほぼ初期位置に留まったままであることが確認できました。



図9-6 GSA-GCLコードで計算した地下水層におけるストロンチウムの2次元分布
 
予測された分布の位置及び形状は、野外試験の結果と概ね一致することが確認できました。これにより、クリマトグラフ理論に基づく評価の考え方そのものの妥当性が示されたことになります。



 原子力発電所などから発生する低レベル放射性廃棄物の処分は、セメントなどで固化した後、浅い地中に設けたコンクリートピット内に埋設し、放射能が十分減衰するまでの期間管理することによって安全を確保することとしています。この浅地中処分の安全評価では、処分施設から放射性核種が環境中へ漏出することを想定して住民の被ばく線量が評価されています。
 私たちは、中国輻射防護研究院との共同研究プロジェクトとして、中国の黄土層中で放射性核種を用いた移行試験を3年にわたって実施し、処分施設から漏出した放射性核種が環境中でどのような動きをするのかを確認しました(図9-4)。
 野外試験の結果、ストロンチウムは地下水の1/20以下、ネプツニウムは1/500以下、プルトニウムは1/5000以下のゆっくりとした速度で、分散によって広がりながら動くことがわかりました。このことは、黄土のような土壌層中を1 m動くのに、ストロンチウムは30年以上、ネプツニウムは750年以上、プルトニウムは7500年以上かかることを意味し、土壌の持つ大きなバリア性能を確認できました(図9-5)。
 また、野外試験の結果は、開発してきた放射性廃棄物の浅地中処分安全評価コードGSA-GCLの検証に用いました。図9-6のように、実地下環境でのストロンチウムの動きは、同コードで良好に予測できることを確認しました。なお、同コードは浅地中処分の基準整備に活用されています。



参考文献
M. Mukai et al., Plan and Progress of a Cooperative Research Program on Field Migration Test between JAERI and CIRP (Phase-2), J. Nucl. Fuel Cycl. Environ., 7, 31 (2001).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2003
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