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使用済チタン酸リチウム微小球のリサイクル基本プロセスを確立




図11-3 使用済Li2TiO3 微小球のリサイクル概念図

使用済Li2TiO3 微小球を溶解した溶解液を直接滴下原液として利用できる微小球製造方法(直接湿式法)を考案しました。これにより、資源の有効利用及び低コスト化に寄与できます。



図11-4 溶解方法改善による焼結密度の向上

焼結密度の向上を阻害するクエン酸を使わずに、過酸化水素水だけで溶解し、Li2TiO3 濃縮度を高くし、乾燥条件を最適化することで、目標の焼結密度の達成に成功しました。



 核融合炉には、燃料であるトリチウムをつくるためのトリチウム増殖材料(リチウム含有セラミックス)の微小球が充填されます。その材料は、希少で高価な6Liを濃縮したリチウムを含むチタン酸リチウム(Li2TiO3)が第1候補材です。微小球は、今まで間接湿式法により製造されていましたが、この製造プロセスでは、処理工程が多く、リチウムの回収率が6割程度と低く、工程内で廃棄物も多量に発生することから、放射化した使用済微小球を低コストでリサイクルすることが困難でした。このため、6Liの有効利用による製造コストの低減化及び廃棄物の減容による環境問題解消の観点から、核融合炉で使用したLi2TiO3微小球を再利用できる微小球製造法の開発が望まれていました。そこで、Li2TiO3微小球を溶解し、その溶解液を直接滴下原液に利用できる製造方法(直接湿式法)を考案しました(図11-3)。
 この概念を実証するために、Li2TiO3微小球の製造に与える溶解液の影響を調べました。Li2TiO3の溶解液として一般的に使用されている過酸化水素水とクエン酸を用いて、微小球を試作しましたが、クエン酸に起因するガス放出等により、焼結密度が上がらず、表面に割れも生じるなど、使用に耐えうるものが製造できませんでした(図11-4 A))。そこで、過酸化水素水のみで溶解することを検討しました。その結果、段階的に溶液を加熱することで、クエン酸なしで溶解することに成功しました。さらに、溶解液中のLi2TiO3濃縮度を高くし、乾燥条件を最適化することで、目標である焼結密度(80%T.D.)を達成し、表面に割れのないLi2TiO3が得られました(図11-4 B))。
 以上のように、核融合炉で用いた使用済Li2TiO3微小球を再利用できる製造基本プロセスを確立することができました。



参考文献
K. Tsuchiya et al., Improvement of Sintered Density of Li2TiO3 Pebbles Fabricated by Direct-wet Process, Fusion Eng. Des., 69, 449 (2003).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2003
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