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核融合炉用の新材料(低放射化フェライト鋼)とプラズマとの適合性を実証




図2-3 フェライト鋼を全面に設置したJFT-2Mの真空容器内部



図2-4 規格化した圧力の改善

このグラフの傾きがプラズマ安定性の指標となる規格化ベータ(βN)で、傾きが大きいほど経済性が高くなりますが,不安定になりやすくなります。不純物の抑制や加熱の方法を工夫することにより、フェライト鋼設置後に規格化ベータを向上させることができ、フェライト鋼壁とプラズマとの共存性を実証することができました。




 核融合炉の炉壁は核融合反応で発生する強力な熱や中性子負荷にさらされることになるので、それらの負荷に耐え、かつ中性子が当たっても放射化しにくい新材料を導入することが不可欠となっています。低放射化フェライト鋼はその最有力候補ですが、強磁性体であるため、核融合プラズマを閉じ込める磁場を乱し、プラズマ性能を劣化させることが懸念されていました。そのため、低放射化フェライト鋼と高性能プラズマとの適合性を証明することが急務であると原子力委員会核融合会議で指摘され、今後の核融合開発の重要課題と位置づけられていました。
 JFT-2Mトカマクでは、実際に低放射化フェライト鋼を導入しトカマクプラズマとの適合性を調べる実験を段階的に進めてきました。その結果、フェライト鋼を真空容器内壁の全面に設置しても(図2-3)、これまで通りに閉じ込め性能の良いプラズマが生成できることを明らかにしました。すなわち、プラズマの近傍に強磁性体が存在しても、悪影響を及ぼさないことを実証しました[1]。さらに、発電実証プラントで想定している圧力の高いプラズマ(規格化ベータ:3.5〜5.5)との共存性を調べるため、ボロンコーティングによる壁からの不純物放出の抑制や中性粒子ビーム加熱の入射タイミングの工夫等をして挑戦してきた結果、これまでのJFT-2Mで達成できなかったような規格化ベータ3.5という高い圧力のプラズマの生成に成功しました[1,2](図2-4)。
 これらの結果は、低放射化フェライト鋼を発電実証プラントで使用できる見通しを与えるものであり、今後の核融合開発における重要な成果となります。



参考文献
[1] K. Tsuzuki et al., High Performance Tokamak Experiments with a Ferritic Steel Wall on JFT-2M, Nucl. Fusion, 43(10), 1288 (2003).
[2] K. Kamiya et al., Observation of High Recycling Steady H-Mode Edge and Compatibility with Improved Core Confinement Mode on JFT-2M, Nucl. Fusion, 43(10), 1214 (2003).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2004
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