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プラズマの揺らぎの構造を制御して閉じ込めを改善する |
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核融合を目指したトカマクプラズマでは、ミクロからマクロまでのさまざまの時空間スケールの揺らぎが発生し、乱流状態に発達してトカマクの閉じ込めを低下させます。特に、コンパクトな核融合炉では狭い空間に高い圧力を維持しないといけないことから、温度勾配が急峻になり、揺らぎを発生させる自由エネルギーは必然的に増大します。しかし、揺らぎの特性を制御して、輸送を起こしにくい揺らぎに変化させることができれば、高い圧力状態で高い閉じ込め性能を維持することが可能になります。 数値トカマク実験(NEXT)研究では、電子の温度勾配に起因する乱流発生のシミュレーションを行い、磁気シアと呼ばれる磁力線の捩れ具合を調整することによって揺らぎの特性を変化させ、閉じ込めに優れた状態を見いだすことに成功しました。 図2-7(A)に見られるように、磁力線の捩れが強い通常の磁場構造では揺らぎは強い乱流状態となり、プラズマ粒子は散乱されて熱輸送は増大します。 これに対して磁力線の捩れを弱くすると、(B)に見られるように、揺らぎはポロイダル方向に長く伸びた規則的な帯状構造(帯状流)へと変化し、その結果プラズマ粒子の散乱が抑制され、熱輸送は(A)に比べて大きく低減することが分かりました。 図2-8 はこれらの二つの磁場構造に対して、電子の熱輸送係数と帯状流のエネルギーを電子の温度勾配に対して調べたものです。磁気シアが強い場合(青色)は温度勾配とともに熱輸送係数が増大して閉じ込めが低下します。しかし、磁気シアが弱い場合(赤色)は、温度勾配がある値を上回ると帯状流のエネルギーが著しく増大し、それに伴って熱輸送係数が飽和・減少していく様子が分かります。 これらの結果は、高い圧力状態においても磁場構造を適切に選択してやればプラズマは揺らぎの形態を自発的に変化させ、高い閉じ込め状態を維持する機能を有していることを示しています。これらの研究は高性能プラズマ実現の理論的指針を与えました。 |
●参考文献 Jiquan Li et al., Numerical Study of Zonal Flow Dynamics and Electron Transport in Electron Temperature Gradient Driven Turbulence, Phys. Plasmas, 11(4), 1493 (2004). |
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2004
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