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プラズマ中性化セルでプラズマ加熱装置の性能アップ




図2-10 ガス中性化方式とプラズマ中性化方式

プラズマ中性化方式では、ガス分子に加えて、ガス分子より中性化反応断面積が2倍程大きいイオンや電子でも負イオンを中性化するため、ガス中性化方式より、中性化効率を大幅に増大することができます。



図2-11 中性化効率の水素ガス線密度依存性

実測した中性化効率( )は計算値(実線)と良く一致しました。プラズマの電離度が30%で70%以上の中性化効率が得られる見通しを得ました。




 中性粒子入射加熱装置(NBI)はプラズマを加熱して核融合反応を起こし、定常運転を行うために不可欠な装置です。従来のNBIでは、最初に重水素の高速負イオンビームを作り、これを中性化セルに通してガスと衝突させ、余分な電子一個をはぎ取り、電荷を持たない中性粒子ビームとするガス中性化方式を採用していました。しかし、この方式では60%のイオンしか中性化することができず、このためNBIの全体の効率は40%程度に留まっています。プラズマで中性化する方式では、70%以上の中性化効率が得られることが理論的に予想されていました(図2-10)。しかしながら、プラズマ中性化セルに開けたビームを通すための開口部からプラズマが漏れ出すために、中性化に必要となる高い電離度(プラズマ密度/ガス密度)を保持することが困難でした。そこで今回、この開口部に約30ガウスの弱い横磁場を作り、プラズマ中性化セル内のプラズマ密度を1.5倍程度増加させることに成功しました。このプラズマ中性化セルに負イオンビームを通して中性化効率を測定した結果が図2-11です。ガス中性化方式よりも高い中性化効率が確認され、さらに理論的な予想とも良く一致することが明らかになりました。この結果、NBIシステムにおいても、核融合発電炉で求められるシステム効率が50%以上の高効率NBIが実現する可能性が示されました。プラズマ中性化セルを用いると、真空ポンプ、残留イオン処理装置が大幅に小型化できるため、NBIシステム全体がコンパクト化でき、経済性に優れた核融合発電炉の実現が可能となります。



参考文献
M. Hanada et al., Experimental Comparison between Plasma and Gas Neutralization of High-Energy Negative Ion Beams, Rev. Sci. Instrum., 75(5), 1813 (2004).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2004
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