2-7

冷える、強い、安い−ねじ山フィンを用いた高性能冷却管技術
―片側加熱条件下におけるスクリュー冷却管の熱疲労実験―




図2-12 スクリュー管の熱疲労試験体と試験条件

原研では高い除熱性能、優れた機械強度、安い製作コストの3つの特徴を有する高熱流束機器用冷却管としてスクリュー管を提案しています。スクリュー冷却管は冷却管内面にねじ加工を施すことにより、ねじ山の凹凸により伝熱性能を促進させます。しかしながら、スクリュー管が繰り返し加熱を受ける場合、このねじ加工部からの疲労亀裂の発生が懸念されていました。そのため、核融合炉条件より厳しい20及び30 MW/m2の繰り返し熱負荷を与えて、その疲労寿命を調べました。この試験体では、冷却管の下部を固定して、冷却管に発生する熱応力をより集中させる構造にして実験を加速させています。



図2-13 スクリュー管の疲労寿命予測と水漏れ発生サイクルの比較

上図のスクリュー管の熱疲労実験条件に合わせた数値解析から冷却管に発生する機械歪み振幅を評価し、スクリュー管の疲労寿命を予測した結果、実験値()とよい一致を示し、スクリュー管の疲労寿命が予測可能であることが分かりました。



図2-14 熱負荷20 MW/m2における亀裂破面の観察

走査電子顕微鏡(SEM)による破面観察の結果、疲労亀裂は加熱面側から冷却面側へと進展していることが分かりました。このことから、ねじ山加工部が亀裂発生の起点となるのではないか、という懸念は払拭されました。




 核融合炉のダイバータは真空容器内機器の中で唯一プラズマと接触するため、これまでの工学機器が経験したことのない20 MW/m2以上の高い定常熱負荷を受けます。このような機器に適用できる冷却管として、原研ではスクリュー冷却管を提案しています。スクリュー冷却管は管内面にねじ加工を施し、その凹凸により冷却面近傍の冷却水の剥離及び攪拌を促進させ、高い伝熱性能を実現します。これまでの実験により、ITERダイバータで採用されているスワール冷却管(ねじりテープを挿入し、冷却水を旋回)より、高い除熱限界を有することが分かっています。しかしながら、このスクリュー冷却管が繰り返し加熱を受ける場合、このねじ加工部からの疲労亀裂発生が懸念されていました。
 そこで、ダイバータを模擬したスクリュー冷却管の熱疲労挙動を実験的に、及び数値解析的に調べました(図2-12)。実験では、核融合炉条件より厳しい20及び30 MW/m2の熱負荷を試験体に与え、冷却管に疲労亀裂による水漏れが発生するまで繰り返しました。数値解析では、有限要素法を用いて試験体形状を模擬した解析モデルの熱及び応力解析を行い、得られた冷却管の機械歪み振幅を基に疲労寿命を評価しました。図2-13は、疲労寿命予測(実線)と実験結果(水漏れが発生したサイクル数)をプロットしたもので、両者は良い一致を示しています。スクリュー冷却管のねじ切り面のような複雑流路に対しても数値解析を援用することで充分な精度で熱疲労寿命を予測できることを示すことができました。また、破面観察の結果(図2-14)、冷却管の亀裂は冷却面側(ねじ加工部)からではなく、加熱面側(外側)から進展していることが分かりました。このことは、懸念されていたスクリュー管のねじ加工部からの亀裂発生がダイバータ形状では発生し難いことを示しています。これまでの除熱及び熱疲労の観点からスクリュー管のダイバータへの適用性を示すことができました。今後、電磁力などの影響の評価を行い、核融合炉の設計に役立てる予定です。



参考文献
K. Ezato et al., Thermal Fatigue Experiment of Screw Cooling Tube under One-Sided Heating Condition, J. Nucl. Mater., 329-333(1), 820 (2004).

ご覧になりたいトピックは左側の目次よりお選びください。

たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2004
Copyright(c) 日本原子力研究所