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中性子線量計測の信頼性向上に向けて
―単色中性子校正場の開発と国家標準とのトレーサビリティの確保―




拡大図(50KB)

図3-6 加速器を用いた単色中性子校正場

加速された陽子または重陽子が中性子発生ターゲットに入射して核反応を起こし、単色中性子が発生します。この単色中性子を利用して、さまざまな試験を行います。ビームラインから60°の方向に中性子モニタが設置されており、校正点の中性子フルエンスを評価しています。


表3-1 単色中性子校正場の特性評価結果

開発した校正場の中性子エネルギーの拡がりと最大フルエンス率及び最大線量量率(H*(10))です。これらの値はターゲットから1.0 m位置の校正点で評価しています。




図3-7 中性子の単色性の測定

中性子のエネルギー分布を実測し、単色性のよい中性子が発生していることを確認しました。さらにシミュレーション計算を行い、妥当な実測結果が得られていることを検証しました。




 中性子線量計は、入射する中性子エネルギーによって感度が大きく異なるため、中性子線量を正確に測定することは困難です。このような中性子線量 計測の精度を向上させるには、線量計のエネルギー特性を正確に評価することが重要となります。従って、さまざまな中性子エネルギーの校正場が必要となりま す。
 そこで、静電加速器を利用した単色中性子校正場(図3-6)を開発しました。この校正場は、加速された荷電粒子(陽子または重陽子)を中性子発生ターゲットに入射させて、そこで起こる核反応で発生する単色(エネルギーが揃った)中性子を利用します。
 現在までに7Li(p,n)7Be反応及び2H(d,n)3He 反応を利用して144、565 keV及び5.0 MeVの3エネルギーの単色中性子校正場を開発しました。これらの校正場では、液体シンチレーション検出器を用いて、中性子の飛行時間を精密に測定するこ とによりエネルギーを評価し、シミュレーション計算によりその妥当性を検証しました(図3-7)。その結果、中性子エネルギーの拡がりは小さく、十分によ い単色性が得られていることを確認しました(表3-1)。
 校正点における中性子フルエンスは、照射室内に設置された中性子モニタの計測値から導出します。また、国家標準(産業技術総合研究所)で値付けされた測 定器(基準移行用測定器)を使用してこの中性子モニタの値付けを行うことにより、国家標準との中性子フルエンスに関するトレーサビリティ(国家標準とのつ ながり)を確保しました。これにより、国内初の単色中性子に関する二次標準場が整備され、中性子線量計の精密な性能評価試験が可能となりました。
 今後、開発した評価手法を応用して、核反応の種類を増やし、加速電圧を調整することにより、利用できるエネルギー範囲を8 keV〜20 MeVまで広げる予定です。



参考文献
Y. Tanimura et al., Construction of 144, 565 keV and 5.0 MeV Monoenergetic Neutron Calibration Fields at JAERI, Radiat. Prot. Dosim., 110, 85 (2004).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2004
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