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中性子スピンを使ったパルス中性子ビームの高性能化
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J-PARCの物質・生命科学実験施設で行われる予定のパルス中性子実験では、中性子が減速材から飛び出す時刻が曖昧さなく揃っていれば、試料や検出器に中性子が到達する時刻から、中性子の波長(エネルギー)を決定することができます。しかし、実際には中性子が減速材から飛び出す時刻には数十から数百マイクロ秒の幅(パルス幅)が存在します。パルス幅が大きいと、中性子の波長がそのぶんだけ曖昧になるため、測定の分解能が落ちてしまいます。そこで、中性子の空間的スピン共鳴現象を利用して、中性子ビームのパルス幅を狭める方法を開発しています。特に、結合型減速材から出る大強度ですが、パルス幅の広いビームのパルス幅を狭めて、大強度でかつ高分解能の実験を可能にすることが目的です。 空間的スピン共鳴現象は空間的周期性を持つ磁場により、特定の波長(共鳴波長)を持つ中性子だけがスピンの向きを反転させる現象です。従って、スピン反転を起こした中性子だけを取り出せば、中性子を共鳴波長に単色化できます。この過程を使った単色化装置をドラブキン型エネルギー・フィルターと呼びます。 ドラブキン型エネルギー・フィルターでは、図4-13のような矩形に折ったアルミニウム・シートから発生する交代磁場と、それに垂直な一様磁場により、スピン共鳴反転が起こります(図4-14)。共鳴波長はこの合成磁場の強度によって制御可能です。そこで、共鳴波長をパルス中性子の減速材からの飛行時間に合わせて変化させれば、減速材から遅れて出てきた中性子を取り除き、パルス幅を狭めることができます。図4-15はJ-PARCの結合型減速材から得られるビームのパルス幅を狭める効果をシミュレートしたものです。このような効果的なパルス整形を、実験で使用する中性子ビームの波長範囲全体にわたって一度に実行でき、大強度のまま非結合型減速材なみのパルス幅を実現できると期待しています。 |
●参考文献 D. Yamazaki et al., Pulse Shaping by Means of Spatial Neutron Spin Resonance, Nucl. Instrum. Methods Phys. Res., Sect. A, 529, 204 (2004). |
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2004
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