ホタテ貝は青森県の特産物であり、年間約10万トンの生産があります。図6-5に示す貝柱のボイル加工や缶詰等への加工に伴い、約2万トンの中腸腺(ウロ)や生殖巣等の廃棄物が発生しています。ウロはタンパク質やドコサヘキサエン酸やエイコサペンタエン酸、ビタミン、ミネラル等の有価物を含むにもかかわらず、有害金属であるカドミウムを10〜20 ppm含むため、産業廃棄物としてほとんどが焼却処分されています。
放射線グラフト重合法では、有害金属を効率的に吸着除去できる捕集材を作製することができます。この方法では不織布などの布基材に電子線を照射した後、金属を吸着する機能を導入することで、布状の金属捕集材を作製することができます。
ボイル加工されたウロはタンパク質が変性し、カドミウムイオンが強固に結合していますが、食品にも利用される無害のリンゴ酸に浸すことにより、カドミウムを抽出することができます。カドミウムを抽出したリンゴ酸溶液のpHは図6-6に示すように、3.3前後であるため、アミドキシム型捕集材よりイミノ二酢酸型捕集材の方がカドミウムの除去に適しています。
グラフト重合で作製した布状のイミノ二酢酸捕集材をカラムに充填して、リンゴ酸溶液からのカドミウム除去(図6-7)を行いました。その結果、1時間に捕集材体積の230倍の流量で、捕集材体積の120倍の体積のリンゴ酸溶液からカドミウムを規制値の0.1 ppm濃度まで効率的に除去することができました。
この研究は、平成15年度の新エネルギー・産業技術総合開発機構が募集した産業技術研究助成事業に採択され、青森県工業総合研究センター八戸地域技術研究所、八戸工業高等専門学校、青森県ほたて貝廃棄物処理協同組合の協力を得て、実用化を目指しています。 |