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多重γ線分析によるイリジウムの超高感度分析
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1980年にカルフォルニア大学のAlvarezらは6500万年前の白亜紀の地層中(K/T境界)にイリジウムの異常濃集を発見し、恐竜絶滅の原因としてイリジウムを多く含む隕石の衝突説を提唱しました。同様の大量種絶滅は他にも何度か起きていると考えられており、他の地層においても同様の異常濃集を探るためにイリジウムの検出が試みられています。 しかし、地殻中のイリジウム濃度は100 ppt(1ppmの1万分の1)程度という極微量しか含まれていないので、その分析をするためには複雑な化学操作を行わなければならず、詳細な結果を得るのは大変困難です。本研究では原研において開発された多重γ線分析法を用いることにより、イリジウムの高感度非破壊分析を可能にすることができました。多重γ線分析はGEMINI-II(図8-7)という19台のγ線分析装置を球形に配置した装置を用いて行います。これにより極微量元素から発せられる微弱なγ線を高い感度で検出することができます(図8-8)。 この方法を用いて3億7千万年前のデボン紀後期フラスニアン/ファメニアン境界(F/F境界)周辺の地層の詳細な分析を行いました。分析の結果を図8-9に示します。地層中のイリジウム濃度が100から200 ppt程度ですがF/F境界においてイリジウム濃度が急激に高くなり、1000 ppt程度にまで達しているのが分かります。 この結果からそれまで研究者の間で意見の相違があったF/F境界におけるイリジウムの異常濃集を初めて確認することができました。しかし、その濃度はAlvarez達が見出したK/T境界での値と比べると十分の一程度でしかなく、隕石衝突が単一原因でなく、海洋底に蓄積されたメタンハイドレートが隕石衝突に伴い大量に大気中に放出され、一気に温暖化が進んだ結果大量種絶滅が起きたという新説の根拠となりました。 |
●参考文献 Y. Hatsukawa et al., Ir Anormalies in Marine Sediments: Case Study for the Late Devonian Mass Extinction Event, Geochim. Cosmochim. Acta, 67, A138 (2003). |
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2004
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