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分離環境を利用して成長するアクチノイド抽出剤
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アメリシウム(Am)、キュリウム(Cm)などの三価アクチノイドは、人体に有害なα線を長い間放出し続ける同位体を持つことから、地層処分の前に高レベル放射性廃液の中から取り除き、核変換することが必要であると考えられています。そこで、これらの元素を効率的に取り除くための分離抽出剤TODGAが原研によって開発されました。三価アクチノイドの抽出分離には、酸素などの結合の手を複数持った抽出剤“多座配位抽出剤”の適用が有効であることが知られています。TODGAも結合の手を三つ持つ三座抽出剤(図8-10)で、これまで世界的に主流だった二座抽出剤に比べ、その分離効率がめざましく優れていることを報告してきました。この結合の手が一つ増えることで、“なぜ分離効率がめざましく向上するのか?”が大きな疑問でした。パルス中性子を用いる中性子小角散乱法で、図8-12の切片や傾きの値から求めた会合体の大きさや構成する分子数により溶液中での抽出剤の姿を明らかにしたところ、抽出剤同士が会合し“新しいもう一つの抽出剤”が生まれているという驚くべき成長を遂げていることが分かったのです。 TODGAによるアクチノイドの抽出分離では、TODGAが、アクチノイドイオンに2分子作用し、[An(TODGA)2(H2O)3](NO3)3という形で有機相に溶けることでアクチノイドを分離します(図8-11)。ここまでは、ふつうの抽出剤なのですが、さらにTODGAは、水相の平衡酸濃度が2 M以上になると図8-12に示したように分離する環境に存在する硝酸分子、水などを接着剤にTODGAが6つ会合した(TODGA)6という新しい抽出剤に成長し、図8-11のアクチノイド化合物に作用することで抽出を促進します。このメカニズムが、TODGAのアクチノイド分離性能を世界最高に引き上げているのです。 |
●参考文献 T. Yaita et al., Influence of Extractant Aggregation on the Extraction of Trivalent f-Element Cations by a Tetraalkyldiglycolamide, Sol. Extr. Ion Exch., 22(4), 553 (2004). |
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2004
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