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中性子照射下での応力腐食割れ(SCC)試験を目指して
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軽水炉内でステンレス鋼などの材料を長期間使用した場合に問題になるのが照射誘起応力腐食割れ(IASCC)です。IASCCは原子炉内の特殊な環境下(中性子照射、高温水)でさまざまな要因が重なることで発生することが知られています。従来のIASCC研究では、予め中性子照射を行った材料についてセル内に設置した照射後試験装置を用いて高温高圧水中での応力腐食割れ(SCC)試験が行われてきました。しかし、中性子照射が材料及び水環境に同時に作用するような照射下SCC試験は技術的に困難なため、国内では実施例がありませんでした。 そこで私たちは、炉内高温水中照射、荷重制御、亀裂発生・進展モニタリング、照射試験片の再計装など、照射下 IASCC 試験を実施するのに必要な技術の開発を行ってきました。図11-1は、IASCC発生及び進展試験に用いる荷重負荷ユニットの概念図です。ユニットに設置した金属ベローズ内のガス圧を制御することにより、試験片に荷重を負荷します。IASCC発生試験では、割れの発生後極力短時間で破断するよう細軸(直径1.5 mm)の試験片を用いて定荷重(Uniaxial Constant Load: UCL)引張試験を行い、ベローズ内に設置した端子の抵抗変化によって遠隔で破断を検知します。IASCC進展試験では、CT(Compact Tension)試験片に一定の電流を流し、負荷中の電位差の変化により亀裂の進展量及び進展速度を計測します。図11-2(a)及び(b)はSUS304熱鋭敏化材(非照射)を用いた照射下試験(炉内モックアップ試験)後の試験片の写真です。発生試験片には、SCCによる粒界型の破面が観察されました。この炉内モックアップ試験により、照射下試験技術を確証でき、照射材を用いる照射下SCC試験により精度良いデータを取得できる見通しを得ました。 この研究によって得られる成果は、炉内構造材料の高経年化、長寿命化対策にとって必要なIASCC機構の解明のために、大変重要であると期待されています。 |
●参考文献 H. Ugachi et al., Program of In-pile IASCC Testing under the Simulated Actual Plant Condition, Proceedings of ICONE-11, CD-ROM-36136 (2003). |
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2004
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