高温ガス炉は900℃の熱を供給することができ、その熱を直接利用して水の分解(熱化学法ISプロセス)を行えば、二酸化炭素を排出しないクリーンな水素製造システムを構築することができます。この実証を行うため、HTTRと水素製造プラントの接続を目指しています。
HTTRへ水素製造プラントを接続するためには、2次ヘリウム配管が原子炉格納容器を貫通するため、この2次ヘリウム配管に隔離弁を設置する必要があります(図1-7)。ところが、HTTRから水素製造プラントに供給されるヘリウムガス温度は約900℃であり、このような高温雰囲気で使用できる弁はありません。そこで、耐熱性、耐久性及び高いシール性を備えた高温ヘリウムガス用の隔離弁を開発する必要があります。
高温隔離弁の開発課題は、(1)熱ひずみを抑制し、弁座シート面の平面度の維持、(2) 高温(900℃)で使用できるシート盛金材の開発、(3)高いシール性能を確保できる弁座形状の選定です。内部断熱型アングル弁を採用し、弁座形状を工夫することにより(1)の課題を解決し、(2)については500℃程度で使用されている従来の盛金材であるステライト合金をベースに、高温域での硬度及び対摩耗性を向上させた新しいシート盛金材を開発しました。さらに、(3)については、弁座要素試験により、従来のくさび型に比べて、平面型の弁座が弁締め切り時の摺動やかじりによるシート面の損傷を低減できることを明らかにしました。これらの対策を施して、模擬高温隔離弁(図1-8)を製作しました。高温時のヘリウムガスのシール性能を確認した結果、漏えい流量の目標値を十分下回る高いシール性能を確保できることが実証できました(図1-9)。
この成果により、大きな課題であった高温隔離弁の技術を確立することができました。本研究内容は文部科学省からの受託研究「核熱利用システム技術開発」の成果の一部です。 |