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何故、トカマクでは逆向きの電流が流せないの?
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トカマク型核融合装置ではプラズマに電場を加えることによりトロイダル電流を流し、その電磁力を用いてプラズマ圧力を支え、力学的な平衡状態を得ています。さらに将来の核融合炉ではプラズマ自身が作り出す自発電流を利用することにより効率的な運転を目指しています。プラズマの全電流を一定に保った運転をしているトカマク装置で非常に大きな自発電流が流れると磁気軸付近に負の電圧がかかります。通常の導体で負の電圧がかかると負方向に電流が流れるはずです。ところが最近、JT-60で中心部に負の電圧がかかるような状況をつくると負の電流は流れず、電流密度がほぼゼロの領域が発生することが見いだされました。すなわちトカマク・プラズマの中心部はまるで巨大な整流器の様に、順方向には電流を流すが、逆方向には電流を流さないのです。 この「電流ホール」が形成され、安定に維持される機構を調べるため、核融合プラズマの複雑な現象の解析をめざしたNEXT(数値トカマク実験)研究においてプラズマ中心部に負電圧をかける磁気流体シミュレーションを行いました。プラズマがトーラス状であること、電流のしみ込みが関係する長時間の現象であることに留意した解析により得られた形成・維持機構の概要は、プラズマ半径の0.6程度の位置で自発電流が増加すると、電流しみ込み時間程度遅れてプラズマ中心部に負のトロイダル電場がかかります。すると中心部の電流密度が減少しゼロの領域が現れます(図2-3の時刻2000アルフェン時間付近)。しかし、電流が流れていないとプラズマの平衡を支えることができなくなり、プラズマは動き出します。このとき外側のプラズマには電流が流れて平衡が取れているため、静止したままです。上下対称の閉じた流れとなるため図2-4に示すような互いに逆方向に回転する双対渦が生じます。この渦運動は、僅かに中心部に流れる電流による電磁力により駆動され続けます。 この対流運動によるプラズマ流と中心部に残っている磁場の相互作用(フレミングの右手の法則)により負の電圧が打ち消され、プラズマ中心部にほとんど負の電流は流れません。 この過程は地磁気の発生などで見られる電磁流体の運動により起電力が生じるダイナモ効果の逆過程とも考えることができ、外部からの影響に対して系が自らその分布を変化させる自律形成現象の一例です。 この「電流ホール」現象は準定常的であり、磁場の揺らぎ(時間変動)を発生せずに電流がしみ込む時間スケールより長い時間維持されます。従来の核融合炉設計では、平衡が無くなるのを防ぐため、高自発電流時には外部からの電流駆動が必要であると考えられていましたが、安定に存在する「電流ホール」現象の発見により、より効率的な核融合炉の実現が期待できます。 |
●参考文献 T. Tuda et al., Pair Vortices Formation near Magnetic Axis as an Explanation of the “Current Hole” Sustainment, 20th IAEA Fusion Energy Conference, Nov. 1-6, 2004, Vilamoura, Portugal, IAEA-CN-116/TH/P2-10 (2005). |
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