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JT-60、高圧力プラズマの長時間維持に成功
―ITERの先進運転に大きく貢献―




拡大図(46.6KB)

図2-5 圧力指数2.3を22.3秒維持した放電の波形

上図:プラズマ電流立ち上げ後、正イオン源中性粒子ビーム(P-NB)を最適化されたタイミングと波形で入射。10秒以降は負イオン源中性粒子ビーム(N-NB)も加えて加熱の最適化を続けます。中図:圧力指数2.3を22.3秒間維持(プラズマ電流が一定の間)。下図:電流分布指数が放電後半にはほぼ一定に落ち着き、これは電流分布が定常状態に達したことを示しています。



拡大図(42.2KB)

図2-6 圧力指数とその維持時間の進展

赤丸は従来の結果、白丸は高加熱時間を30秒に伸張した以降のデータ。緑で示した領域(1.8-2)がITERの標準運転で、オレンジで示した領域(2.5-3)が先進運転でそれぞれ想定される圧力指数の領域。今回の成果は、標準運転領域を超え、先進運転近傍にまで達する圧力指数を従来を大きく超える長時間維持しています。




 核融合炉の出力はプラズマ圧力の2乗に比例します。したがって、いかに圧力の高いプラズマを閉じ込めるかが核融合炉の経済性を高める上で重要となります。トカマク型の核融合炉では、外部から与えるトロイダル磁場やプラズマ中に流れるプラズマ電流に対して、どれだけ高い圧力を閉じ込められるかが目安として使われます(圧力指数)。ITERでは標準運転の他に、将来の定常核融合炉を見据え、より高い圧力指数プラズマの長時間維持を目指す先進運転とよばれる運転シナリオが検討されています。JT-60では、ITERの標準運転を上回り先進運転で想定される値に近い圧力指数値を世界最長の22.3秒にわたり維持することに成功しました(図2-5)。
 プラズマ圧力が高くなると、それに起因した電磁流体的な不安定性が発生し、プラズマからのエネルギーの流出の増大(エネルギー閉じ込めの劣化)を引き起こします。この不安定性の発生には、圧力指数とともにプラズマ内部での圧力やプラズマ電流の空間分布が関連します。JT-60には様々な入射角度を持った正イオン源を用いた中性粒子ビームやITERで用いられる負イオン源を用いた中性粒子ビームが備えられ、これまでもそれらを駆使して加熱の分布やタイミングの最適化により不安定性を避けつつ圧力指数を高める研究を行い成果を上げてきました。ITERの先進運転や定常核融合炉の実現には、このようにして得られた高い圧力指数を長時間維持できることを実証することが必要です。これは、不安定性発生の鍵を握るプラズマ電流分布が落ち着くまでにかかる時間が長く、その時間以上長く維持しないと不安定性の影響を確認できないからです。この時間はJT-60では10秒あるいはそれ以上にもなります。そのため、JT-60では制御システム等を変更し、それまでは10秒までであった加熱パワーの入射時間を30秒間まで伸長しました。この長時間加熱に従来から蓄積した加熱分布の最適化等不安定性回避の手法を適応することにより、今回の成果を得ました(図2-6)。今回の成果は、ITERの先進運転の実験を先導し、その実現を確実にするものです。



参考文献
S. Ide et al., Overview of JT-60U Progress towards Steady-State Advanced Tokamak, Proceedings of 20th IAEA Fusion Energy Conference, Nov. 1-6, 2004, Uilamoura, Portusal, IAEA-CN-116/OV/1-1(2005) (submitted to Nucl. Fusion).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2005
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