軽水炉燃料の高燃焼度化は、使用済燃料発生量の低減、二酸化炭素の低減、経済性の向上、ウラン資源の有効利用等を図るため推進されています。高燃焼度化の促進にあたって、ペレット内に生成されるクリプトン(Kr)、キセノン(Xe) 等の放射性の核分裂生成物(FP)ガスが増加します。本来、その大部分をペレット内に保持する必要がありますが、ペレット外周のリム組織部から一気にFPガスが放出することが懸念され、また、原子炉の過渡負荷時におけるFPガス放出量が増加するため、燃料棒内圧の上昇が燃料棒の安全性に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、ペレット内のFPガス放出挙動を調査するために、アウトガス分析装置を開発しました(図3-4)。
本装置は、融点温度近傍まで加熱可能な高周波加熱炉(図3-5)及び加熱によりペレットからの放出した残留FPガスを連続的に測定する四重極質量分析計で構成されています。試料容器及び加熱部は、耐熱性及び化学的安定性の良いタングステンを用い、さらに、ペレットのFPガス放出量に応じ、分析計の測定可能範囲内に真空度を維持するために、FPガス流量を調整できる3種類の流量調整管を考案しました。この手法によって、全体量を把握するためのペレット1個(約5 g)から微小領域での放出挙動を測定するための数十mgの微小試料までFPガス放出量に応じた測定が可能になりました。
本装置の開発により、照射済燃料ペレットの段階的な昇温におけるFPガスの放出曲線が取得でき(図3-6)、放出の温度依存性に関する解明が可能となりました。高燃焼度燃料等の通常時及び事故時のFPガス放出挙動を評価する上で有効な基礎データを提供することができ、高燃焼度燃料の健全性評価に貢献しています。 |