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軽水炉燃料のより良い利用に貢献する照射後試験技術
―燃料ペレット内のFPガス放出挙動測定技術―




図3-4 アウトガス分析装置の概略

高周波加熱炉をホットセル内、四重極質量分析計を操作室に分離配置して計測・保守を容易にしています。すなわち、FPガス測定ラインのバルブを開閉してFPガスの流量を1/500、1/4、全量に調整でき、放出量の多い物から少ない物まで精度良く測定できます。



図3-5 ホットセル内の高周波加熱炉外観写真

加熱炉内への試料の設置は、マニピュレータにより遠隔で行うため、真空チャンバーごと取り外せる構造としてあります。



図3-6 照射済燃料ペレットを用いた試験結果

照射済燃料ペレット(約2g)を400℃から2000℃まで12ステップで加熱した時のKrとXeの放出量を示します。各昇温時の放出量が分析でき、1500℃付近の放出量増加は、結晶粒内からのFPガス放出と考えられます。




 軽水炉燃料の高燃焼度化は、使用済燃料発生量の低減、二酸化炭素の低減、経済性の向上、ウラン資源の有効利用等を図るため推進されています。高燃焼度化の促進にあたって、ペレット内に生成されるクリプトン(Kr)、キセノン(Xe) 等の放射性の核分裂生成物(FP)ガスが増加します。本来、その大部分をペレット内に保持する必要がありますが、ペレット外周のリム組織部から一気にFPガスが放出することが懸念され、また、原子炉の過渡負荷時におけるFPガス放出量が増加するため、燃料棒内圧の上昇が燃料棒の安全性に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、ペレット内のFPガス放出挙動を調査するために、アウトガス分析装置を開発しました(図3-4)。
 本装置は、融点温度近傍まで加熱可能な高周波加熱炉(図3-5)及び加熱によりペレットからの放出した残留FPガスを連続的に測定する四重極質量分析計で構成されています。試料容器及び加熱部は、耐熱性及び化学的安定性の良いタングステンを用い、さらに、ペレットのFPガス放出量に応じ、分析計の測定可能範囲内に真空度を維持するために、FPガス流量を調整できる3種類の流量調整管を考案しました。この手法によって、全体量を把握するためのペレット1個(約5 g)から微小領域での放出挙動を測定するための数十mgの微小試料までFPガス放出量に応じた測定が可能になりました。
 本装置の開発により、照射済燃料ペレットの段階的な昇温におけるFPガスの放出曲線が取得でき(図3-6)、放出の温度依存性に関する解明が可能となりました。高燃焼度燃料等の通常時及び事故時のFPガス放出挙動を評価する上で有効な基礎データを提供することができ、高燃焼度燃料の健全性評価に貢献しています。



参考文献
畠山祐一 他、照射済燃料ペレット内FPガス分析技術の開発、JAERI-Tech-2004-033 (2004).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2005
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