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歯を用いた被ばく線量評価法を開発
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高い被ばく線量をもたらす放射線事故などでは、日常の被ばく管理に使用する個人線量計が線量を正確に評価できない可能性があります。このような場合、線量は被ばく者の体内試料と放射線の相互作用を利用した計測法により推定できます。その中で、歯エナメル質の電子スピン共鳴(ESR)計測を利用する方法は、計測信号の安定性の理由から有効とされています。この方法は、ESR計測で得られる信号強度が歯エナメル質の受けた線量に比例するという特性に着目したものです。一方で、被ばく評価では、放射線に対する感受性の高い臓器や組織の受けた線量が重要となります。これらの臓器や組織は主に胴体内にあり、元素組成も歯エナメル質と大きく異なります。そのため、ESR計測で直接評価される歯エナメル質の線量と臓器線量は、大きく異なる場合があります。 そこで、私たちは体外からの光子(γ・X線)被ばくに対する歯エナメル質と臓器の受ける線量の関係を研究しました。まず、モンテカルロ計算シミュレーションにより歯エナメル質の線量を解析するため、図3-7に示す歯を組み込んだ人体モデルを新たに開発しました。このモデルを用いた計算により、エネルギー、人体への入射方向が異なる様々な被ばく条件について、歯エナメル質と臓器の受ける線量の関係を解明しました。解析結果の一例を図3-8に示します。また、歯を口腔部に含む頭部模型(図3-9)を用いた光子照射実験を行い、計算シミュレーション結果の妥当性を検証しました。 本研究の成果は、歯エナメル質のESR計測に基づく線量評価において不可欠なものとして、国際原子力機関(IAEA)などの技術報告書に採用され、国内外の過去の被ばく事例における線量評価で現在活用されています。 |
●参考文献 F. Takahashi et al., Analysis of Absorbed Dose to Tooth Enamel against External Photon Exposure, Radiat. Prot. Dosim., 103(2), 125 (2003). |
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2005 Copyright(c) 日本原子力研究所 |