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マイナーアクチノイドの核変換を目指して
―アクチノイド核種の断面積データを検証する―




図4-4 照射前後の241Am試料中の同位体割合の測定値

左の図は、照射前後の試料中の同位体割合の測定例(241Am試料)を示しています。原子炉で照射すると、様々な核反応によって照射前には無かった同位体が生成されます。照射前後のそれぞれの同位体の変化を調べることによって、断面積データを検証することができます。



図4-5 核種の変化量の実験値と計算値の比較

実験の結果得られたMA試料(Np, Am, Cm)中での同位体の変化量を計算値と比較した結果で、試料中の目的核種と2次的に生成される核種の結果を示しています。計算は、世界で主に使われている断面積ライブラリ(ENDF/B-VI.8(米国)、JEFF-3.0(欧州)、JENDL-3.3(日本))を使いました。図から、2次生成核種の結果は、実験値との差が大きくて、ライブラリ間の差も大きいことが分かります。このことから、捕獲反応断面積の改善が必要なことが分かります。




 原子力発電所の使用済み燃料の中で、特に長期にわたる放射性毒性が問題になるネプツニウム(Np)やアメリシウム(Am)などマイナーアクチノイド(MA)は、核分裂反応によってその大部分を安定または短寿命の核種に変換することができます。原研では、MAを効率良く核変換するための装置の研究を進めていますが、そのためにはMAの基礎的な特性を知らなくてはなりません。
 そこで、最も基本的な核物理的特性である断面積データを検証するために、原子炉で照射したアクチノイド試料の化学分析を行い、照射による同位体量の変化を調べました。分析を行ったのは、イギリスの高速原型炉で照射された全部で21種類のアクチノイド試料(トリウム(Th)からキュリウム(Cm)まで)です。これによって、高速炉スペクトルでの照射試料としては世界的にも非常に貴重な分析結果を得ることができました(図4-4)。
 この分析結果と計算結果を比較して、MA核種の断面積データの検証を行いました。断面積に関する情報は、評価済みライブラリと呼ばれる一つのデータセットにまとめられています。世界で主に使われている最新のライブラリは、米国のENDF/B-VI.8、ヨーロッパのJEFF-3.0、そして日本のJENDL-3.3です。これら3つのライブラリを使った計算を行って、分析結果との比較を行いました(図4-5)。その結果、235Uや239Pu等の主要な核種に対しては非常に良く分析値と一致していましたが、MA核種では分析値との不一致が大きいことが分かりました。これらの結果から、今後の断面積データの改善の方向性を示すことができました。



参考文献
K. Tsujimoto et al., Integral Validation of Minor Actinide Nuclear Data by Using Samples Irradiated at Dounreay Prototype Fast Reactor, AIP Conference Proceedings, #705, 523(2005).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2005
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