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超新星爆発の光が重元素を生成した証拠を発見
―太陽系に存在する重元素の起源の解明を目指して―




図5-1 カシオペアA:超新星爆発の残留物

太陽の8倍以上の質量を持つ恒星が最期に超新星爆発を起こします。カシオペアAに観測された残留物にも光で生成された重元素が含まれています。

https://apod.nasa.gov/apod/ap040826.html



拡大図(28.7KB)

図5-2 超新星爆発の光による新しい重元素(原子核)の生成メカニズム

超新星爆発が発生する時に、酸素/ネオン層で光核反応が発生します。元から存在していた原子核にγ線が入射し、中性子を剥ぎ取られ、新しい原子核が生成されます。



拡大図(28.7KB)

図5-3 バリウム領域の核図表の一部

上側がBa領域の核図表の一部です。横軸が中性子数、縦軸が陽子数に対応します。Baとキセノン(Xe)等には、起源が謎であるp核と、遅い中性子捕獲反応で生成されたs核のペアが存在しています。このようなp核とs核のペアは18個あります。この2つの原子核の太陽系における存在する割合をプロットすると、ほぼ一定であることを発見しました。



 約140億年前のビックバンで、水素、ヘリウム等の軽元素が生成されました。一方、重元素は銀河系の誕生以降に、恒星の中の核反応で軽元素から生成されました。図5-1のような生成された重元素は、銀河系内の星間物質として蓄積されます。そして、今から約46億年前に、私たちの太陽系が星間物質から誕生しました。そのため、太陽系に存在する重元素の起源(天体環境、核反応)の解明は、太陽系の起源、銀河系の物質の化学進化の理解に必要不可欠です。
 既に、太陽系に存在する鉄より重い重元素を構成する原子核の約99%は、s過程、r過程と呼ばれる2種類の中性子の捕獲反応で生成されたことが判明しています。しかし、残りの原子核はp核と呼ばれ、その起源は謎でした。p核は、陽子過剰領域側に位置する希少な安定同位体です。p核の起源を説明するために、高エネルギー宇宙線による生成、中性子星のX線バースト、超新星爆発の光による生成(図5-2)等の仮説が提案されていました。
 本研究では、太陽系に存在する同位体の比率(太陽組成)に、一定の法則があることを発見しました。図5-3に示すように、p核とp核より中性子が2個多いs核(s過程で生成された原子核)のペアが18組存在しています。この2つの原子核は、s核の量/p核の量=23という法則を満たすことを発見しました。この法則は、図5-2に示すように既に存在していたs核より、光核反応によって、p核が生成されたことを示す証拠です。さらに、最新の天体観測による超新星爆発モデルにより、この法則が再現されることが判明しました。
 本研究は、p核が超新星爆発の光核反応で生成されたことを示す証拠を発見したばかりでなく、超新星爆発、銀河系の物理進化の理解に貢献する重要な指針を与えます。



参考文献
T. Hayakawa et al., Evidence for Nucleosynthesis in the Supernova γ Process: Universal Scaling for p Nuclei, Phys. Rev. Lett., 93(16), 161102 (2004).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2005
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