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高分子膜を使って電気をつくる
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まず、最初に学校で習った水の電気分解を思い出してみましょう。水が分解して酸素と水素が発生します。言い換えると、水に電気エネルギーを与えて、水素と酸素を得たことになりますが、逆に水素と酸素を電気化学的に反応させると水が生成し、電気エネルギーを取り出すこともできます。これが燃料電池の原理です。 燃料電池は、イオンを伝導する電解質の種類や作動温度によって4、5種類に分類されますが、常温で作動し、小型・軽量化できる固体高分子型燃料電池に最も注目が集まっています。電解質にイオン交換膜を使用することが特徴で、自動車、家庭用コジェネレーション、携帯電話・ノートパソコンなどの電源として、幅広い分野で実用化に向けた開発が進められています。この電池の心臓部である電解質膜は、イオンを伝導する本来の性質をもつとともに、水素と酸素が混ざらないようにする隔膜としての役割も担っています。そのため、電池の性能を上げるためには、高いイオン伝導性と燃料に対する優れた安定性をもつ膜の開発が必要です。 当初私たちは、水素に変換できるメタノールを燃料とした燃料電池用に、スチレン分子をフッ素系樹脂膜に導入した電解質膜を開発しましたが、これではメタノールの透過を抑える性能と耐久性が不十分であるという課題がありました。そこで、この課題を解決するため、スチレン分子の代わりに耐酸化性、高イオン伝導性が付与できる2種のモノマーと、柔軟性、高密度な網目構造を付与できる2種の橋架け剤からなる四成分で放射線グラフト共重合する技術、及び基材であるフッ素系樹脂膜とグラフト分子鎖を同時に放射線橋架けする技術を新しく確立しました(図6-6)。これにより、イオン伝導性を市販膜の2倍にまで向上させたうえに、高メタノール濃度(10 M)の下でメタノール透過速度を1/10に抑制する高性能な電解質膜の開発に成功しました(図6-7)。また、スチレン分子を導入した以前の電解質膜(連続4200時間の電池作動が可能)に比べ、新開発の膜では耐久性が6倍向上することを加速試験において確認しました。 この技術で得られた膜は、今秋、共同研究先の日東電工株式会社から製品として販売される予定です。 |
●参考文献 T. Yamaki et al., Preparation of Proton Exchange Membranes Based on Crosslinked Polytetrafluoroethylene for Fuel Cell Applications, Polymer, 45, 6569 (2004). |
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