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新しいイオンビーム集束方式で世界最小径のkeV領域ガスイオンナノビーム形成に成功 |
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ナノテクノロジーを応用した材料表面微細加工・分析技術には keV 領域のビームエネルギーを持つイオンナノビームが必要とされています。従来、イオンナノビームを利用するには集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)装置が用いられていましたが、ガリウムイオン等の金属イオンビームに限定されているため、物質への大きなダメージと物質中への残留という根本的な問題を抱えています。 これらの問題を解決する有効な手段として水素等のガスイオンが必要とされています。ガスイオンを発生させるにはプラズマ型イオン源を用いるのが一般的ですが、このイオン源で得られるビームの最小径は数100 μmであり、100 nm程度にビームを集束するためには縮小率が数千以上のレンズ系が必要となります。しかし、従来型の磁気・静電レンズではこの縮小率を達成することが困難でした。そこで、荷電粒子加速に用いられる加速電極が形成する電場のレンズ効果に着目し、加速と集束を同時に行う加速レンズを二段に配置し、イオンビームのレンズ系への入射エネルギーと加速エネルギーの比を大きくすることで、コンパクトなレンズ系ながら縮小率2000程度の高縮小率を有するレンズ系を開発しました(図6-8)。加えて、このレンズ系に整合したイオン源として、低エネルギー・準単色のイオンビームを発生するデュオプラズマトロン型イオン源、及びナノサイズのイオンビーム径を正確に測定する装置を開発しました。この装置では20 nm以下の分解能でナイフエッジを移動させてビーム電流を測定し(図6-9)、ナイフエッジ位置とビーム電流カーブからビーム径を求めます。 これらの要素技術を組み合わせて keV 領域ガスイオンナノビーム形成装置を開発し、ビームエネルギー46 keVで世界最小径の160 nmの水素イオンナノビームの形成に成功しました(図6-10)。これより、試料汚染が全くない新たな材料表面微細加工・ダメージの少ない分析技術開発への道を切り拓くことが期待されます。 |
●参考文献 Y. Ishii et al., Progress in Submicron Width Ion Beam System Using Double Acceleration Lenses, Nucl. Instrum. Methods Phys. Res., Sect. B, 210, 70 (2003). |
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2005 Copyright(c) 日本原子力研究所 |