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炭素原子は普通4本の「手」を伸ばして4個の水素原子と結合します(CH4)。これは、炭素、窒素、酸素等のように周期律表の第2周期の元素では共有結合する際に原子価軌道に8個の電子が存在する時が最も安定であるというオクテット則の現れです。ところが水素を化学的性質が似ているリチウムで置き換えた炭素化合物は特別な条件の下では、たとえばCLi6のように原子価軌道にある電子の数が8以外の数を取り得ることを実験的に発見しました。精度の高い量子力学的計算を行って、超リチウム化分子と呼ばれるこの奇妙な分子の存在が理論的にも確認され、原子価電子の数が9、10、11である多数の超リチウム化分子の存在の可能性が理論的に示されました。たとえば、オクテット則に従った分子であるLi2Sと比べて超リチウム化分子であるLi3SやLi4SではLi-S 結合に対してLi-Li結合が強くなり、この結合に寄与する電子軌道が分子全体を包み込むようになることがコンピュータグラフィックスで理解できます(図1-5)。これらの分子の結合状態の解明は、化学結合論の新しい展開をもたらすものとして期待されています。 |
参考文献
H. Kudo, Observation of Hypervalent CLi6 by Knudsen-effusion Mass Spectrometry, Nature, 355, 432 (1992). |
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995 copyright(c)日本原子力研究所 |