1.6 原子核殻構造エネルギ−地図の谷間の探検
   

 

図1-7  殻構造エネルギ−の等高線

等高線の数値(絶対値)が大きいほど対応する中性子数、陽子数を持つ原子核は安定です。(中性子数、陽子数)が(126、82)および(178、114)のところにエネルギ−の極小値があります。今まで発見、合成された原子核は丸印で示してあります。

 


 地球上で天然に存在する元素は、原子番号43番のテクネチウムと61番のプロメチウムを除いた1番の水素から92番のウランまでの90種類です。これらの内の放射性元素の多くは今世紀前半に次々と発見され、現在までに上記の43番、61番元素を含めて109番元素までが発見または合成されています。新しい元素の合成にはいろいろな原子核反応が用いられ、わずかな生成物を検出するために巧妙な方法や機器が使用されています。どの程度の大きさの原子まで合成されるのかを知ることは興味深いことですが、これは原子核殻構造のエネルギ−地図の谷間を捜すことで予測がたてらてます(図1-7)。原子核は陽子と中性子から構成されていますが、それぞれの数が特定の値(マジックナンバ−)をとる時、原子核が最も安定に存在するという殻構造の理論が知られています。現在知られている最大のマジックナンバーの次のマジックナンバーを持つ原子核は178個の中性子を持つ原子番号114番の原子核です。このマジックナンバ−のところで殻構造エネルギ−が極小になっていて、そこで新元素が合成可能であると考えられており、このような新元素を求めて研究を進めています。この研究は単に未知のものを発見する興味だけでなく、長年蓄積されてきた原子核に関する知識が今までにない極端条件下でも正しいかどうかを計る、厳しい試験であるともいえます。


参考文献

池添博, 重元素合成とエキゾチック原子核の構造、原子力工業、41(3)、31 (1995).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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