2.1 はじめに
   

 

図2-1  トカマク型核融合装置

 

 
図2-2  核融合発電のしくみ

プラズマ中での核融合反応エネルギーをブランケットにより熱として取り出します。この後は、火力発電所と同様な方法で発電します。

  

 
図2-3  核融合への道

 

 
表2-1  原研における核融合研究開発

 


 太陽の不断のエネルギーの源は、太陽の内部で起っている核融合反応です。私たちは、この核融合反応を地上で起して電気エネルギーを取り出す核融合炉の開発を目指して研究を進めています。核融合は、必要な燃料などの資源が豊富で偏在しないことや、環境への影響が少ないことなどから、21世紀以降の新しいエネルギー源として期待されているものです。
 この地上で最も起し易い核融合反応は、水素の仲間(同位元素)である重水素とトリチウム(三重水素)の原子核同志の反応(DT反応)です。反応を起すためには、燃料の重水素とトリチウムの混合気体を1億度以上の高温に熱してプラズマという状態にして、これを強い磁場の力を使って容器の中に閉じ込めることが必要です。現在最も研究が進み、優れた閉じ込めの性能が実証されているのが原研のJT-60などのトカマク型という方式で、閉じ込めのためにプラズマ中に電流を流す(プラズマ電流)ことが特徴です(図2-1)。
 発電は、DT反応の結果生ずる中性子のエネルギーを、図2-2のようにブランケットで熱に変えて取り出し、蒸気を発生してタービン発電機で行います。ブランケットでは熱の発生とともに、燃料の一部であるトリチウムの生産も行います。
 核融合の研究は、トカマク型を中心に目覚ましい進展を遂げており、核融合炉によるエネルギー生産の条件である「自己点火条件」の実現まであと一歩というところまで達しています。現在、ヨーロッパ連合、日本、ロシア及び米国が協力して進めている国際熱核融合実験炉ITERの計画は、この自己点火条件を達成するとともに、核融合炉に必要ないろいろな工学技術を総合的に試験・実証することを目的とするものです。
 原研は、炉心プラズマの研究から超電導磁石を始めとする主要な炉工学技術の開発を含む、核融合の総合的な研究開発(表2-1)において、現在まさに世界の最先端にあります。

 私たちは、実験炉ITERの開発を進めるとともに、今後の長い道のり(図2-3)を着実に拓いていくために、トカマク型核融合炉の "定常運転" の課題の解決やブランケットや材料に関する工学技術など、核融合炉に要する新しい技術の研究開発に鋭意取り組んでいるところです。


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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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