2.2 ここまできたプラズマの閉じ込め
   

 

図2-4  トカマクプラズマ性能(核融合積)の進展

各装置の最高値は短時間性能を表わします。

・JT-60(原研)
・JET(ヨーロッパ連合)
・TFTR,DIII-D(米国)
・JT-60SU(原研、設計検討中)
・定常核融合炉SSTR(原研、設計目標値)
・ITER(国際熱核融合実験炉、設計目標値)

 

 

図2-5  閉じ込めのモードとイオン温度の分布
標準放電
トカマクの通常の運転モード
Hモード
プラズマの周辺で熱が逃げにくくなる壁(障壁)ができて、標準放電に比べて閉じ込めがよくなります。
高プラズマ圧力モード
プラズマの内部に壁ができて閉じ込めがよくなります。
高プラズマ圧力Hモード
上の二つのモードをうまく共存させるとプラズマ全体で閉じ込めがよくなります。(JT-60で実現した高性能閉じ込め)

 


 大型トカマク装置JT-60では、将来の核融合炉の炉心プラズマとして必要な性能とそのために要する条件の最適化の道を探りながら研究を進めています。炉心プラズマの閉じ込めは、核融合積(中心イオン温度×閉じ込め時間×中心密度)で評価します(図2-4)。「臨界プラズマ条件」は、核融合反応による出力と高温のプラズマを発生するために必要な加熱入力とが釣合う条件、「自己点火条件」は加熱入力を絶っても一旦生じた核融合反応が持続する条件で、核融合炉が成立する条件です。現状は、前者の条件をほぼ達成し、実験炉ITERによって自己点火条件の達成を目指す段階にあります。
 核融合積の値は、現在JT-60が最高値を得ていますが、これらの値は図2-5に示すように、いくつかのそれぞれ特徴のある運転条件(モード)の下にほぼ同等の性能をもって得られたものです。高いプラズマの圧力下で優れた閉じ込め性能を得たことは、将来の炉心プラズマの“定常運転”や核融合炉の“コンパクト化”につながる価値ある成果です。
 JT-60で得た最高の温度、4億8千万度は、太陽の内部の温度の約30倍にも達します。


参考文献

The JT-60 Team, Recent JT-60U Results towards Steady State Operation of Tokamaks, 15th International Conference on Plasma Physics and Controlled Nuclear Fusion Research, Seville, Spain, IAEA-CN-60/A-1-I-2 (1994).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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