2.3 計算機で探るプラズマの物理
   

 

図2-6  計算機シミュレーションによるプラズマのミクロな振舞いの解析

 

(a)  高温プラズマ中に生ずる渦。渦は形を変えながら反時計回りに回転しています。プラズマの熱は渦の周辺に沿って流れ、中心部から周辺に運ばれて失われます。
赤は正の静電ポテンシャル、青は負の静電ポテンシャルの等高線を示すもので、プラズマ中の乱れによる局所的な電界のでき方を示しています。

(b)  (a)図の状態のプラズマに時計回りの回転を加えると、大きな渦が分かれて小さな渦になり、電界も小さくなって熱の運ばれ方が小さくなります。これによって閉じ込めの性能がよくなります。

図2-7 プラズマ中に生ずる渦(乱れ)と熱の輸送

300万個の粒子を用いてトカマク・プラズマの振舞いを模擬して計算します。

 


 計算機シミュレーションによって複雑なプラズマの現象を調べ、物理的な機構を明らかにしていく研究は、計算機技術の急速な進歩と相まってますます高度化し、精密化しています。
 私たちは、スーパコンピュータを用いて、最も難しく重要な課題の一つである高温プラズマから熱が逃げていく機構(熱輸送)を、300万個の粒子を用いたトカマク・プラズマのモデルにより追究しています。最近の研究の結果、熱の損失をもたらすと考えられているプラズマ中の渦(乱れ)がこれまでの理論的予測より大きくなることがわかり、実験で観測されている熱の損失量を説明できる可能性を明らかにしました。また、プラズマを急速に回転させると、大きな渦が小さな渦に分れて熱の損失が抑えられることも見い出しています(図2-7)。このような効果は、最近のJT-60で得られているよい閉じ込めを実現する機構として働いているものと考えられます。


参考文献

Y. Kishimoto et al., Self-organized Critical Gradient Transport and Shear Flow Effects for Ion Temperature Mode in Toroidal Plasmas, 15th International Conference on Plasma Physics and Controlled Nuclear Fusion Research, Seville, Spain, IAEA-CN-60/D-2-II-3 (1994).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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