2.4 定常運転への道を拓く
   

 

図2-8  高周波による非誘導電流駆動

駆動した電流の大きさと、どれだけ効率的に電流を駆動できたかを示しています。 電流駆動積:ICD・Rp(駆動電流値×平均電子密度×プラズマ大半径) 電流駆動効率=電流駆動積/入射パワー (1019 MA・m-2/MW)

 

 

図2-9  自発電流の発生

プラズマの圧力が高いほど自発電流が発生しやすくなります。

 

図2-10  高性能プラズマの準定常維持の実証

定常核融合炉で要求される多くの性能を同時に達成・維持した実験データで、定常核融合炉のコンセプトを物理的に実証しました。

 


 私たちは、将来の核融合炉として、連続運転ができ安定に定常的な電力を供給できるトカマク型発電炉(定常トカマク炉)の開発を目指しています。JT-60による炉心プラズマの研究は早くからこの課題に向けて系統的に進めています。
 定常トカマク炉を実現するためには、(1)変圧器の原理によらないプラズマ電流の駆動(非誘導電流駆動)、(2)高圧力プラズマの閉じ込め制御、(3)プラズマからの熱や粒子の排出制御、などの方法を開発・確立することが鍵となります。(1)は外部から高周波の電磁波や高エネルギーの粒子ビームを加えることにより可能です。(2)は高い核融合積を得ること(図2-4)とともに、圧力が高いプラズマ中に自然に流れる“自発電流”を多く得るためにも必要です(外部からの非誘導電流駆動を節約することができます)。(3)は炉心のプラズマを安定に保つために、炉心部から余分の熱や不純物などの粒子を巧く逃してやることです。これはプラズマの周辺の磁場の形を工夫したダイバータによって可能ですが、大量の熱や粒子が直接当たるダイバータ板の材料や形状構造などの技術開発も必要です。
 高周波による非誘導電流駆動では、360万アンペアの電流駆動に成功しています(図2-8) 。また、入れた電力に対してどれだけ電流を流せるかという効率も、実験炉ITERなどの必要とするレベルにほぼ達しています。粒子ビームを使った電流駆動の実験も成果をあげています。自発電流の発生についても大変有望なデータ(図2-9) を得て、定常運転の実現に向けた考え方をより確かなものとしています。
 熱や粒子の排出については、これらが直接流入するダイバータ板の負担をできるだけ軽減する工夫が必要です。これは、ダイバータ板の近傍に巧く“プラズマの雲”をつくって、ここからプラズマのエネルギーを放射の形で逃がしてやることで実現できそうです。
 図2-10は、原研の定常トカマク炉SSTRの設計例とほぼ同レベルの総合性能のプラズマを、準定常的に維持できることを実証したJT-60のデータです。プラズマ電流は、外からの粒子ビーム入射と自発電流だけで流しています。閉じ込めの性能もSSTRの設計で想定したレベルをほぼ満たすとともに、図2-4に示したように準定常運転での最高のものです。図2-10の重水素の発光のデータは、プラズマからの熱や粒子の排出が適度に行われ、よい閉じ込めが維持されていることを示しています。


参考文献

近藤 貴、他、JT-60Uにおける簡素化マルチジャンクション型低域混成波ランチャーを用いた大電流駆動実験、日本原子力学会誌、Vol.37、No.2、 p.124-132 (1995).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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