3.5 レーザーによってフッ素樹脂表面に新しい機能を与える
   

 
図3-10  レーザー光照射によるPFAへの親水性の付与

照射量が増えると、化学薬品で処理した場合より親水性が向上する(水によく濡れるようになる)。

 

 
図3-11  親水性とPFA表面の元素比の関係

水によく濡れる表面では、フッ素の割合が減少し、酸素(この場合はカルボン酸)の割合が増加していることがわかった。

   


 フッ素樹脂は、優れた耐熱性、耐薬品性、電気特性をもっていますが、反面接着性や親水性が悪く、もっているよい性質を複合材料や生体材料として利用したくてもなかなかうまくいきませんでした。
 そこでフッ素樹脂にレーザーを照射することによって、樹脂表面から疎水性のフッ素が除かれ、新たに親水性のカルボン酸が生成することなどの光化学反応をうまく利用することによって、フッ素樹脂固有の欠点を克服する方法を開発しました。これまでにポリ四フッ化エチレン(米国デュポン社の開発した“テフロン”に代表される樹脂)を光吸収剤とともにレーザーを照射して接着性を付与する技術、四フッ化エチレン−フッ化アルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を一酸化炭素飽和水中でレーザー照射して親水性を与える技術を開発しました。


参考文献

A. Okada et al., Endoment with the Wettability on the Surface of Tetrafluoroethylene-Perfluoroalkyl Vinyl Ether Copolymer by Excimer Laser Irradiation, Chem. Lett., 1993, 1637 (1993).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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