4.1 安全性研究の概要
   


 
図4-1 原研における安全性研究

  


 原子力施設および環境の安全確保は、原子力の開発と利用の大前提です。これらを国と共に支えるための研究を行い、将来技術として重要となる安全性向上の研究も進めています。
 原研における安全性研究は図4-1に示すように、「原子炉の安全性研究」、「燃料サイクル安全性研究」、「環境安全性研究」の3つの柱から成り立っています。このほか原子炉の安全性向上、放射性廃棄物処理、基礎研究など、その他の関連する研究も行っています。
 これらの研究は、原子力委員会が定める「原子力研究、開発、および利用に関する長期計画」および原子力安全委員会が定める原子力施設、放射性廃棄物、環境放射能等「安全研究年次計画」に沿って進められています。そのねらいは、国が行う安全基準、指針等の整備、安全審査の判断資料の作成、安全性向上のための改良、開発などです。そのほか、特別会計の資金によって種々な安全性の実証試験を行いパブリックアクセプタンスにも役立っています。
 原子炉安全性研究では、軽水炉利用の長期化に対応しつつ、高燃焼度燃料の挙動、構造材の経年変化、アクシデントマネージメント(原子炉事故の拡大防止および影響緩和の対策)の研究、緊急時対応および受動的安全性の研究(外部からの操作なしにシステム自体のメカニズムで安全機能を確保するための研究)が重要な課題となっています。
 燃料サイクル安全性研究では、再処理工場の安全運転と安全性向上のため、完成した燃料サイクル安全工学研究施設(NUCEF)を活用した臨界安全性、閉じ込め安全性の研究を行っています。さらに、放射性廃棄物管理の負担を軽減させる研究の重要性が増しています。
 環境安全性の研究では、低レベル放射性廃棄物の研究から、高レベル廃棄物、超ウラン元素を含む廃棄物処分の安全評価研究へと重点が移っています。
 また、環境放射能評価の研究では、測定手法の高精度化、大気拡散予測の広域化を図ると共に、とくに放射性物質の事故時挙動、海洋挙動などの解析方法の開発が重要となりつつあります。
 原子力の安全確保は世界各国共通の課題であり、先進国との研究協力のみならず開発途上国等への支援にも手を抜くわけにはいきません。
 原研では、これらの成果利用の促進を図ると共に、社会の要請に応じた安全研究はもちろん、新しい安全性向上の芽も育てていく考えです。


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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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