4.2 原子炉の自然循環機能を確かめる
   


図4-2  LSTFの系統概念図

LSTFは、110万kW級PWRを、同一の高さ、運転圧力、及び温度条件で模擬する総合実験装置で、体積は1/48です。

 


図4-3  実験と解析の比較

この実験の解析結果を示しています。解析には原研開発のモデルと米国の評価モデルRELAP5/MOD3を用いました。原研モデルは実験とよく一致します。

 


 AP600炉は、米国ウェスチングハウス社ほかが開発中の次世代型加圧水型軽水炉で、事故時の除熱には、機械に頼らず、自然の重力を利用した安全用機器を使用しています。これらの機器に故障はほとんどありませんが、注水などのための駆動力が弱いので、その機能は炉内の熱水力学的状態に支配される可能性があります。
 大型非定常試験装置(LSTF)は、加圧水型軽水炉(PWR)の事故時の過渡的な熱水力学的現象を、実物大の規模で忠実に模擬することのできる総合実験装置です。自然循環機能の確証のため、LSTFでAP600のコールドレグに接続する炉心補給水タンク(CMT)1基とホットレグ及び加圧器に接続する2段階の自動減圧系を模擬した実験を行いました。CMTと一次系で形成されるループ内に自然循環が生じ、CMTからの注水が安定して行われました。今後装置を改造して本格的な実験を行います。
 この研究は米国原子力規制委員会(NRC)との研究協力協定の下に実施しています。


参考文献

安濃田良成、他, 受動安全PWR(AP600)の事故時熱水力学挙動に関する総合実験, 第72期日本機会学会講演会, 東京, 1995.

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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