4.8 廃棄物の地層処理の安全性を評価する
  

  

図4-11  地層処分の概念

高レベル廃棄物をガラス固化体などの形で固めて、厚い容器に閉じ込め、安定な岩盤の中に埋め込んで放射性物質の移動を遅くするという、いわゆる多重バリアシステムが採用されています。

 


図4-12  線量評価の結果

処分場近くの地層中の均質岩体で100〜500m、亀裂帯で1000mの移動距離を仮定し、井戸水飲料による個人の内部被ばく線量を計算しています。放射性物質ごとの線量はいずれも1μSv以下の低い値となりました。

  


 高レベル放射性廃棄物を安全に処分することは、核燃料サイクルを完成させるための重要な課題となっています。現在、高レベル放射性廃棄物は地下数百mの安定な岩盤中に処分する方針となっています。この処分では、人工と天然の何重ものバリアで放射性物質を閉じ込めて移動を遅らせる、いわゆる多重バリアシステムの考え方が採用されています。
 深地下に処分された高レベル放射性廃棄物を含むガラス固化体から放射性物質が地下水に溶けだし、地下水の動きとともに生態圏へ出てくると仮定し、公衆の受ける線量を評価する計算システムを完成させました。使用済核燃料16,000MTU (金属ウランに換算したトン数)に相当する高レベル廃棄物を典型的な処分サイトに処分したとして、飲料水摂取を通して将来公衆が受ける線量を評価した結果が図4-12です。年間1人あたり10(-7)Svのオーダーの線量値(自然放射線による線量より4桁低い)が得られています。実際には地層中の鉱物に取り込まれたりするので、この計算値より実際の線量はさらに低いはずです。したがって、環境条件が評価期間内で変化しなければ、地層処分は可能であることがわかりました。


参考文献

木村英夫、他, 高レベル放射性廃棄物地層処分の一般的安全評価及び感度解析、JAERI-Research 94-028 (1994).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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