4.10 深地層での放射性物質の動きを探る
  


図4-15  カナダの地下研究施設の配置図

地下250m付近に存在する亀裂帯から採取した岩石試料と地下水を用いて実験を行います。地下水は全く空気に触れないように岩石試料を詰めた管に導いています。

 


図4-16  超ウラン(TRU)元素のカラム内分布

直径2.54cm、長さ20cmの管に岩石試料を詰め、ネプツニウム、プルトニウムおよびアメリシウム等の放射性物質を用いた実験を行いました。注入した放射性物質の大半が管入り口から数cmまでに留まるという、深地下の条件下での特徴的な動き方を捉えることができました。注入速度2.2ml/hで地下水を流しながら、それぞれの放射性物質を含む約110mlの水を注入し、さらに2000時間地下水を流した後、管を回収して放射性物質の分布を測定しています。

  


 高レベル放射性廃棄物は安定な深い地層内に処分されるため、放射性物質が生態圏まで漏れ出てくる経路として、地下水に溶けて出てくる場合がもっとも重要であると考えられます。そこで、処分が実際に行われる深地層の環境条件下で、放射性物質が地下水とともにどのように移動するかを調べることが必要です。
 カナダと協力して、マニトバ州東部に位置するホワイトシェル研究所の地下研究施設内に、放射性物質の移動の様子を研究するための実験室を開設しました。そして、地下250m付近に存在する亀裂帯の地下水を大気に触れることなく岩石試料をつめた管に導き入れ、放射性物質の動きを調べました。大気に触れて酸素を吸った水の中では岩石にほとんど吸着しないテクネチウム、ネプツニウムが、還元的な深地層条件下においては実験用管内の岩石に強く吸着されて移動しにくくなるなど、大気雰囲気中における挙動と異なる結果が得られています。テクネチウムやネプツニウムは寿命が長いため、高レベル廃棄物中に長く残る問題の放射性物質です。


参考文献

M. Kumata et al., Technetium Behavior under Deep Geological Conditions, Radioactive Waste Manag. and Nucl. Fuel Cycle, 17(2), 107 (1993).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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