4.13 人体模型を用いた被ばく線量の計算
  

  

図4-21  原研が開発した数学的人体模型

原研では米国オークリッジで開発された人体模型を基本にして、甲状腺、食道、水晶体等の線量評価精度を上げるため、改良を加えたものを開発しました。人体各組織の被ばく線量が得られれば、これに荷重係数をかけて足し合わせ、体全体への影響を表す「実効線量」を求めることができます。

 


図4-22  ガンマ線に対する実効線量

AP:前面入射  PA:後面入射  LAT:側(右)面入射

  


 人体がX線、ガンマ線や中性子線によって外部から照射されたとき、人体内部の組織が受ける被ばく線量を正確に知るためには、その組織の位置、形状、密度、元素組成等と、その位置における放射線の線量を知る必要があります。人体内部で放射線を測定することは通常不可能ですが、人体内部の線量の分布を計算によって求めることは可能です。このような計算を行う場合、通常数学的な人体模型を設定する方法が取られます。人体模型の中の各臓器、組織は、なるべく実際に近く、しかも形状が単純化されていることが要求されます。このため、それらは現実に近いサイズをもった、球、楕円体、六面体等の幾何学形状要素の組み合わせで定義しています。
 放射線の照射条件として、種々の照射量、方向、エネルギーについて、また年齢別の線量評価ができるよう6種類のサイズの人体模型について「実効線量」を計算するための評価コードを開発しました。図4-21は数学的人体模型、図4-22はガンマ線が人体の前面、後面、側面から入射したときの、エネルギーと実効線量の関係を示しています。


参考文献

山口恭弘、数値シミュレーションを用いた外部被ばく線量計算、日本原子力学会誌、Vol. 36(7)、624 (1994).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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