6.1 原子力船「むつ」
  

  

図6-1 実験航海中の「むつ」

原子力第1船「むつ」の研究開発は昭和38年に日本原子力船開発事業団の設立に始まり、昭和44年6月に進水して以来、さまざまな困難を克服のうえ、平成3年度に実施された4次にわたる実験航海によって、原子炉が厳しい海洋環境下で高い信頼性を維持し、良好な負荷追従特性を示すことなど、舶用動力源として優れた性能をもつことを実証しました。

 

主 要 諸 元
  事  項  
要  項
用  途
 原子動力実験船
航行区域
 遠洋区域
全  長
 130.00メートル
 19.00メートル
深  さ
 13.20メートル
満載喫水
 6.90メートル
総トン数
 8.242 トン
船体構造
 耐座礁、耐衝突、耐浸水 
 原子炉
  型式・数
  熱出力
  燃 料

 
加圧軽水冷却型・1基
 約 36,000 キロワット
 酸化ウラン(低濃縮)
 主機械
  型式・数
  出 力

 
蒸気タービン・1基
 10,000 馬力
航海速力
 16.5ノット

 


 貿易立国としてのわが国にとって、船舶用エネルギー源の安定確保は重要です。現在、原子力は資源・環境問題解決の切札として発電用に定着し、さらに発展しつつありますが、将来的には海上輸送の面でも幅広い利用が想定されます。その場合、単に代替エネルギーとしての役割だけでなく、連続高速航行や水中航行が可能という原子力の特長を活用して、海上輸送の高度化や海洋開発等への大きな貢献が期待できます。
 原子力第1船「むつ」は平成3年度に4次にわたる実験航海を成功裏に終えて、原子力船の設計、建造、運航に関するさまざまな経験と貴重なデータを蓄積することができました。平成4年9月からは解役工事を進めており、平成7年6月には、解役工事の最終段階として原子炉室の一括撤去・関根浜定係港の原子炉保管室への移送を完了しました。


参考文献

T. Ishida et al., Response to Severe Changes of Load on the Reactor System of Nuclear Ship Mutsu, J. Nucl. Sci. Technol., 30 (2), 116 (1993).

ご覧になりたいトピックは左側の目次よりお選び下さい。



たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
copyright(c)日本原子力研究所