7.2 安全で簡単に運転できる原子炉
  


図7-2  JPSR安全系統概念図

受動的熱除去系は、余熱除去用熱交換器、重力注水プールおよび空冷式熱交換器から構成され、自然循環流路で接続されています。受動的注入系は、蓄圧注入タンクと重力注入ラインから構成されています。

 

 


 地球環境保全のための代替エネルギー源として次世紀における実用化を目指し、安全性が一層向上した次世代軽水炉としての受動的安全炉JPSR(JAERI Passive Safety Reactor)の概念検討を実施しています。本炉は、電気出力63万キロワットの2ループ加圧水型軽水炉で、炉心の物理的固有安全性と受動的安全設備とを組み合わせることにより、安全性の向上と原子炉システムの大幅な簡素化を目指しています。図7-2に安全系を含む一次系の系統図を示します。
 JPSRでは安全性を向上させるため、以下のような設計を行っています。
  1. 炉心発熱量が蒸気発生器からの除熱量変化に自動的に追従するような炉心特性とする。
  2. 低出力密度炉心を採用。
  3. 負荷変動時の蒸気温度の変動を制御棒操作なしに許容範囲内とするため、貫流型蒸気発生器を採用。
  4. 自然循環を利用した受動的余熱除熱系および格納容器冷却系を採用。
  5. 冷却材喪失事故時に、重力差あるいは窒素ガス圧により駆動される受動的冷却水緊急注入設備を採用。

 また、原子炉システム簡素化のための設計変更は以下のとおりです。

  1. 出力制御用ほう酸濃度調節機構を廃止し、圧力容器内蔵型の制御棒駆動機構を使用。
  2. 負荷追従運転時にも一次系外へ冷却材を放出しないため大型加圧器を採用。
  3. 一次冷却水の循環に回転軸のシール水を必要としないキャンドポンプを使用。

 以上の特徴により、非常用ディーゼル発電機、弁、ポンプなどの安全上重要な能動機器、および化学体積制御系(CVCS)が大幅に簡素化できます。この結果、原子炉の運転と保守に必要なマンパワーの削減や、人間の判断ミスが原子炉の安全性におよぼす影響の大幅な軽減によって、安全性の向上が実現できます。


参考文献

Y. Murao, et al., A Concept of Passive Safety Light Water Reactor System Requiring Reduced Maintenance Efforts, ANS Winter Meet- ing, San Francisco (1993).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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