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燃料温度の上昇による238Uのドップラー効果は、高速炉の炉心出力が急上昇した場合に炉心固有の即発性の反応度フィードバック機構として安全上重要です。このドップラー効果の高温での予測精度の向上を図るために、従来より高い温度領域(1000℃〜2000℃)において測定可能な装置を開発し、高速臨界実験装置(FCA:Fast Critical Assembly)においてドップラー効果測定を行っています。 高温領域でのドップラー効果測定は、サンプル加熱・反応度価値変化測定法と箔加熱・反応率変化測定法の2つの方法を組み合わせて行います。前者は238UO2試料(約400g)を加熱して、238Uのドップラー効果による試料の反応度価値変化を直接精度よく測定する方法です。一方、後者は238UO2箔(約600mg)をレーザーで加熱して、ドップラー効果による238U中性子捕獲反応率の温度依存性を測定する方法です。 また、実験解析の計算精度を向上するために超微細エネルギー群(約15万群)による計算コード(PEACO-X)を作成し、これを用いた実験解析を行いました。 PEACO-Xの使用により、238Uと装置の耐熱材として用いたタングステンとの中性子共鳴干渉効果等を精度よく評価することができるようになり、これまでの解析手法に比べて、格段に予測精度が向上しました。図7-6に原型炉級酸化物燃料高速炉を模擬した体系における実験結果と計算結果を示します。計算結果は、サンプル加熱・反応度変化測定法では実験値を若干過小評価し、箔加熱・反応率測定法では実験とよく一致します。 |
参考文献
Okajima et al., Doppler Effect Measurement up to 2000℃ at FCA, Proc. of Int. Conf. on Nuclear Data for Science and Technology at Galin- burg, USA (1994). 1009. |
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