7.5 アルファ放射能を正しく測る
    


図7-7  約1.53gのPu試料をパッシブ中性子法の装置で、1時間測定して得られた時間間隔分布

一番上のギザギザした線が実験データです。それを2つの指数関数に分離した結果が、その下側に見える2本の直線です。ゆるやかな直線がランダム成分、急な直線が時間相関成分と呼ばれます。一方、原研で開発したソフトウェアを用いると、自発核分裂率、(α,n)中性子発生率等を与えると、実験データに似た分布が計算されます。そして、自発核分裂率が 240Puとして毎秒 205個、(α,n)中性子発生率が毎秒 1,000個という条件で、実験データとほとんど重なる分布になります。このことから、元の試料が、ほぼここに述べた値の自発核分裂率と(α,n)中性子発生率をもっていることがわかります。

 


 再処理工程からの廃棄物を適切に管理するためには、それに含まれるアルファ放射能量を正しく把握することが必要です。アルファ放射線は、直接、固体表面には出てこないので、透過力の強い中性子を使って間接的に測定されます。
 そのうちの1つがパッシブ中性子法と呼ばれる方法です。アルファ線は酸素などとの核反応によって中性子を放出します((α,n)反応)。また、アルファ放射性核種のいくつかは244Cm、240Puなどのようにひとりでに核分裂を起こし(自発核分裂)、中性子を放出します。これらの中性子を検出してアルファ放射能を導くためには、そのうちどれだけが(α,n)反応によるものか、またどれだけが自発核分裂によるものかを測り分けることが重要です。
 このためには、(α,n)反応では中性子が1個1個バラバラに放出されますが、核分裂では多くの場合複数個の中性子が同時に放出されることを利用します。原研では、すべての中性子検出信号の時間間隔を測り分けるという新しい方式を考案し、実験装置を製作して研究をすすめています。また、得られた測定データからアルファ放射能量および自発核分裂性物質量を迅速に算出できるソフトウェア類の開発も行っています。


参考文献

H. Gotoh et al., An Analytical Expression for the Distribution of Time Intervals Between Succesive Detection Pulses of Neutrons from Spontaneous Fissions, JAERI-M 91-138, P.130.

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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