8.2 新しい超電導体の発見
    


図8-2  還元Nb酸化物系超電導体A2Nb(1+x)Oyの存在領域

 


 ニオブは最も「超電導活性」な元素の一つであり、多くの非酸化物系超電導体(Nb,NbC,NbN,NbSc2,Nb3Sn(Ge))が、現在実用の超電導材料として利用されています。ニオブが酸化物系で超電導性を示せば、その応用範囲はさらに広がると期待されますが、今のところNb系酸化物超電導体としては、NbOx(Tc=1.6K),LixNbO2(Tc=6K)が知られているのみです。
 このような背景のもとで、欠陥ペロブスカイト構造の臨界温度(Tc)8.3〜9.2Kの一連の新しい還元ニオブ酸化物系超電導体A2Nb(1+x)Oy(A=Sr,Ca)を発見しました。
 銅系を含めた従来の酸化物超電導体は、一般に限定されたきわめて狭い陽イオン価電範囲(例えば、Cu(4.75〜2.3+))および組成範囲でしか超電導を示しませんが、今回発見した一連の還元ニオブ酸化物系超電導体は、図8-2で明らかなように、これとは対照的な特異な挙動を示します。すなわち、
  1. Ca,Sr両系ともに、その超電導相が例外的に広い組成範囲(Nb価電領域;Nb(5+〜1+),Nb/A 比領域;0.5〜3)に広がっています。
  2. 最も高い超電導相の生成を示す領域が、Nb(1+〜2+)といった非常に深く還元されたNb価電領域に存在します。
  3. Ca,Sr両系ともに、そのTcはNb/A=1付近を境としてNb欠乏側では9.2K、 Nb過剰側では8.3Kと変化しています。

 この発見は、現在最も重要な実用超電導材料であるニオブの酸化物の超電導体化、有力な非銅系物質の超電導体など、大きな可能性を秘めていると思われます。


参考文献

A. Nakamura, New Reduced Nlobate Superconductors A2Nb(1+x)Oy(A=Ca and Sr) with the Distorted Defect Perovskite Structure, Jpn. J. Appl. Phys. 33, L583 (1994).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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