8.3 岩石型構造をもつ安定なプルトニウム燃料
    

 


図8-3 現行軽水炉内でのプルトニウム同位体の燃焼変化(ジルコニウム型燃料、電気出力100万kWあたり)

 


 「余剰のプルトニウムを持たない」というわが国の原子力長期計画のもとで、プルトニウムを高速炉に代わって軽水炉で燃焼するための新しい燃料の研究が進められています。
 この燃料は、使用済みの最終段階において天然の岩石に類似した安定な化合物になるので、再処理せずそのままの状態で廃棄物として処分できるのが最大の特徴です。
 現在、PuO2-ZrO2-Al2O3系(ジルコニア型燃料)とPuO2-ThO2-Al2O3(トリア型燃料)の2種類の燃料形態について、燃焼する原子炉とその燃焼法の研究を、燃料の研究とともに進めています。これらの研究から現行の軽水炉がこの燃料の燃焼に適していることがわかりました。
 図に示すように、核分裂性の239Puが94%以上含まれる純度の高いプルトニウムをジルコニア型燃料として、100万kW級の軽水炉で燃焼させたとき、燃焼日数が 900日以上になると燃料中の239Pu の割合が大きく減少し、非核分裂性の240Pu と242Pu の割合が60%以上になり、核分裂性物質が欠乏するので燃料としての役目を果たさなくなります。
 燃料の研究では、炉外実験および照射実験により燃料化合物の相状態、物性、照射挙動、および使用済燃料(廃棄物)の照射安定性、化学安定性を調べ、これらのデ−タをもとに燃料製造プロセス、燃料体、廃棄物処分法について検討、評価を進めています。


参考文献

H. Akie et al., A New Fuel Material for Once-Through Weapons Plutonium Burning, Nucl. Technol., 107, 182 (1994).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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