8.4 レーザーにより同位体を分離する
    


図8-4  レーザー法ウラン濃縮プロセスの原理

まず図中の長尺蒸発器内で金属ウランを電子ビームで加熱して蒸気化し(蒸発プロセス)、ウラン原子の流れを作ります。つぎにこのウラン原子の流れに波長可変のレーザーを照射し、235Uのみを選択的に励起します。さらに多段階光電離により235Uを電離させ(光電離プロセス)、電極上に235Uを製品として回収します。電離されないウラン原子(主として238U)は劣化ウランとして回収器に集められます。

 


 原子法レーザーウラン濃縮は、従来の濃縮法(ガス拡散法、遠心分離法)に比べて分離係数が大きいので生産費、資本費を小さく、また電力消費量を低く抑えることができ、原料供給量も少なくて済むので、その技術開発に大きな期待が寄せられています。
 本方法をウラン濃縮に適用するために、まず第1期計画(1987〜1992)として「基礎プロセス試験」が実施され、分光及び分離に関するデータを取得し、濃縮度約5%、分離能力12kg分離作業量/年を達成しました。1993年から開始された第2期計画では、「分離プロセス高度化試験」を進め、分離に関するデータベースを拡張するとともに、より経済性の高い濃縮技術を開発しようとしています。
 これまでに、蒸発プロセス、光反応プロセス、光伝播プロセスおよび回収プロセスについて系統的にデータを取得してきました。また、経済性の追求として、高い電離効率を得るために多段階電離の波長およびレーザー光強度の最適組合せを実験的に見い出そうとしていますし、電離プラズマからイオンを回収する速度については従来の2倍以上に速めることができました。


参考文献

有澤孝、他、原研における原子法レーザー同位体分離光反応プロセスの研究、質量分析、41(51)、253 (1993).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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