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高温超電導のメカニズムの解明に向けて、結晶構造の小さな変化が超電導にどのような影響を与えるかという問題を研究しています。 原子炉から取出してエネルギーを揃えた高密度の熱中性子束を物質に当てて、散乱された中性子の角度分布を精密に測定すると、その物質の結晶構造のわずかな変化までも見分けることができます。この方法をLa2-xBaxCuO4に適用しました。この物質はBaの組成がx=0.125の近くで超電導性をほとんど失うことから、高温超電導のメカニズムを理解するための手掛かりが、この物質にはあると考えられます。 この物質には、常圧下で3つの相があります。200K以上の温度で現れる高温正方晶相(HTT)、それ以下80Kまでの低温斜方晶相(LTO)、そしてさらに低温で現れる低温正方晶相(LTT)です。図9-9にはこれら3相の結晶構造を示しました。それらの上の方に見える井桁状の図形は、結晶構造を真上から見下した図で、CuO6八面体の傾き具合がわかるように画かれています。 この物質に静水圧を0.6GPaまでかけるとLTTが消えて、より簡単な構造のLTOに転移することを、中性子散乱によって発見しました。同時に超電導転移温度Tcも4Kから15Kまで圧力と共に急上昇することを確かめました。 以上の事実から、La(2-x)BaxCuO4のx=0.125の近くでの超電導性の著しい低下は、LTTの特異で複雑な結晶構造に起因することが明らかとなりました。 |
参考文献
S.Katano et al., Pressure effects on the structural phase transitions and superconductivity of La(2-x)BaxCuO4(x=0.125), Phys. Rev. B 48 6569 (1993). |
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