11.4 原子炉による高レベル廃棄物の消滅
   


図11-5  ヘリウム冷却専焼炉の粒子層燃料要素

燃料は超ウラン元素窒化物の微小な粒子で窒化チタンの被覆が施されます。粒子燃料は燃料要素の内外フリット(多孔二重管)間に充填され、燃料要素を通過するヘリウムガスで直接冷却されます。この充填層は熱伝達に優れているので、高い出力密度が達成でき、効率的な消滅処理ができます。

  


 消滅処理専用の原子炉(専焼炉)の研究を行っています。原子炉では、炉心のなかの中性子による核分裂反応などを利用して消滅処理を行います。発電用の高速炉よりもっと速い中性子を用いると、一般に核分裂しにくい超ウラン元素を直接核分裂させることができます。これまでの設計研究の結果、非常に高速の中性子をもつ専焼炉の炉心概念が成立し、これによって300kg/GWt/y 程度の熱出力当たりの消滅速度を達成できることを確認しました。この値は発電炉より20倍以上も大きく、短時間のうちにより効率的で効果的に消滅処理ができることになります。専焼炉を用いると、発電用の燃料サイクルと群分離・消滅処理用の燃料サイクルを分けることができ、厄介な長寿命核種を群分離・消滅処理燃料サイクルのなかに閉じ込めてしまうことができます。
 図11-5は、超ウラン元素の粒子燃料を用いたヘリウム冷却専焼炉の燃料の概念図です。微小な粒子燃料を燃料要素に充填し、ヘリウムガスの流れで直接冷却します。このような型式の燃料を用いることによって、効率的な消滅処理に必要な高い出力密度を達成できます。


参考文献

T. Mukaiyama et al., Minor Actinide Transmutation in Fission Reactors and Fuel Cycle Considerations, Proc. Int. Information Exchange Meeting on Actinide and Fission Product Separation and Transmutation, ANL, (1992). 320.

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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