12.1 光ファイバーを応用した新しい封印
12.2 ビデオカメラを用いた新型監視システム   

 


図12-1 光ファイバーを応用したコブラ封印

 


図12-2  コブラ封印の光学パターン

核物質を収納した容器などを封印するのに従来用いられていた方法では、封印の検認作業に相当の日数を必要としました。この点を改善するため、64本のプラスチック光ファイバー(バンドルファイバー)を用いたコブラ封印の開発が米国サンディア研究所で行われました。核物質を収納した容器などにコブラ封印を取り付けた後、封印本体(図12-1の箱型の部位)にカッターを差し込み光ファイバーの何本かを切断します。この状態で光ファイバーの一方の端から光を入射すると、切断されたファイバーは光を通さないため、バンドルファイバーの断面に図12-2のような特有の光学パターンが現れます。このパターンを登録保存し、次回の査察時に施設ですばやく自動検認できるように原研では新しいシステムを開発中です。

 


図12-3 フィルム撮影方式の監視カメラ設置状態

 


図12-4  原研が開発した監視システム「COSMOS」

従来用いられていたフィルム撮影方式の監視カメラでは、フィルムの現像及び撮影内容のチェックに相当の日数を要し、検認結果のでるのが遅いという欠点がありました。この欠点を補うため、ソニーと協力して新しい監視カメラCOSMOSを開発しました。IAEAでは1994年から各国の施設にCOSMOSの設置を開始しています。COSMOSは8mmのVTRを使用した特殊設計となっており、1枚1枚の静止画をすき間なく撮影(撮影間隔はランダム)し、3ヵ月間3万シーン以上を録画できます。

  


 私達は、ウランやプルトニウムの原子核の分裂によって生れるエネルギーを用いて発電を行い、日常生活に欠くことのできない電気を水道水やガスと同じように使用しています。このウランやプルトニウムは、核分裂性物質(核物質)と呼ばれ、恐ろしい核兵器の原料としても使われる物質です。したがって、これらの核物質を核兵器の製造に用いることなく、平和の目的に限って研究・開発・利用していることを、いつでも世界に立証できるようにする必要があります。これが国際保障措置と呼ばれるしくみです。
 わが国で現在行われている立証のための技術的手法の1つとして、核物質の存在する施設に国際原子力機関(IAEA)および日本国政府の両方の査察官が立入り、核物質の査察という作業が行われています。そして、わが国に存在する全ての核物質が、この査察の対象になっています。
 施設の数、核物質の種類、形態、量等がとてもたくさんであり、全てを1個ずつ検認(報告書の数量と照合、測定)することがきわめて困難となります。
 そこで、この問題を技術的かつ合理的に解決するための1つの方法として、あまり頻繁に移動されない核物質(例えば、出荷前の原子炉用新燃料など)に封印を取り付けて封じ込め、次回の検認の際に、封印の健全性を確認することにより不法な取扱いあるいは盗取の有無を判断し、核物質の詳細な測定作業に置き換えるなどの作業の合理化が行われています。さらに、核物質への人の近接状況や取扱状況を映像として記録し、あとで査察官が録画を調べることにより、不穏な状況あるいは状態変化があった場合には発見できるように、連続的に機器による監視が行われています。
 ここで述べた封じ込めのための封印および監視機器について、査察の合理的改善に寄与するため、さまざまな技術開発、性能向上が継続的に行われています。
 今までに原研が国内のメーカーや米国の研究所と協力してIAEA支援プロジェクトの中で技術開発を進め、完成させた封印および監視機器が、国内はもとより国際保障措置のツールとして世界的に実用に供されています。


参考文献

Y. Yamamoto et al., Development of Electronic Verifier of COBRA Seal, IAEA-SM-333/46 (1994).

T. Mukaiyama et al., Development of Compact CCTV Surveillance System "COSMOS", IAEA-SM-333/47 (1994).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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