13.1 原子炉を解体撤去する
13.2 放射能を除いて廃棄物を捨てる   

 


図13-1  原子炉解体工法

原子炉の解体撤去には種々の技術開発が必要です。原研では、現在までに開発した技術を適用してJPDRの解体を進めています。この図は、原子炉本体を解体撤去するために開発した解体工法を示したものです。

 


図13-2  電解除染の結果

配管内に内部電極を挿入した電解除染によって、ステンレス配管の内面汚染を10分前後で3桁以上低減できることを確認しました。

 


図13-3  建屋コンクリート汚染面切削除染の結果

建屋内部の汚染のあるコンクリート面を切り出し、深さ方向に1ミリずつ詳しく放射能を測定した結果、コンクリートへの汚染の浸透はせいぜい数ミリ以下、最大でも1センチ程度であることがわかりました。

  


 現在、わが国で稼動中の発電用原子炉は、稼動期間が30年〜40年と見込まれ、21世紀初めには原子炉の廃止措置が重要な課題となります。
 原研では、原子炉の廃止措置に備えて、原子炉解体技術開発を昭和56年度から開始し、その成果を実際に確かめるため、使命を終えた動力試験炉(JPDR)に適用し、解体実地試験を進めてきました。
 原子炉の解体撤去では大きく分けて、
  1. 放射性物質を含む機器構造物を安全に解体撤去する、
  2. 放射性物質を除染等によりできる限り除去する、
  3. 大量の廃棄物を適切に処理する、

という課題を解決する必要があります。
 解体撤去では、図13-1に示すように、各種の解体工法についての技術開発を行い、放射能の2次的な汚染を起こすことなく、それぞれの特徴を生かして、効率よく安全に解体することができました。たとえば、アークソーでは、発電用原子炉の圧力容器に相当する20センチ程度の厚さまで鋼鉄を切断解体できることがわかりました。
 放射能除染では、硫酸セリウムによる酸化還元除染、微粒子研磨剤による流動研磨除染、マイクロ波によるコンクリート表層破砕除去等の技術を開発し、図13-2の電解除染は、短時間に大幅な放射能低減が図られることを示しました。
 また、図13-3の結果からコンクリート表面の汚染については、数ミリから1センチ程度の切削で大部分のコンクリートから汚染物質を完全に取り除くことができることがわかりました。
 廃棄物の処理では放射能汚染金属類の溶融とそれによる放射能の均一化の試み等により、廃棄物の大幅な減容が可能であることを確認しました。


参考文献

K. Fujiki, Development programs on decommissioning technology for reactors and fuel cycle facilities in Japan. : Present status and STA's view for advanced technology development.: Decommissioning policies for nuclear facilities. Proc. of an International Seminar. Decommissioning policies for nuclear facilities. Paris (France) 2-4 Oct. 1991. 111 (1992).

日本原子力研究所動力試験炉部編、JPDR解体実地試験の現状(ワイド特集)、原子力工業、37(2)、14(1991).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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